【合計1600馬力の豪腕対決】シボレー・カマロZL1xサットン・マスタング 後編

公開 : 2021.10.30 09:45

アメリカ車と聞いて思い浮かべる代表例といえば、マッスルカー。高度にチューニングを受けた最新モデルを、英国編集部が比較しました。

見た目に違わずド派手な走り

執筆:Matt Prior(マット・プライヤー)
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
クライブ・サットンCS 850GT フォードマスタングのシートは幅がが広く、掛け心地も良い。ドライビングポジションも、人間工学的に考えられている。

ドラマチックなエンジンが前方に載っているが、レザーとアルカンターラ、コントラスト・カラーのステッチなど、軽くアップデートされたインテリアは落ち着いた空間だ。859psを楽しめる。

ガンメタリックのクライブ・サットンCS 850GT フォード・マスタングと、ブラックのゲイリー・ハンダ・モディファイド・シボレー・カマロ ZL1
ガンメタリックのクライブ・サットンCS 850GT フォード・マスタングと、ブラックのゲイリー・ハンダ・モディファイド・シボレーカマロ ZL1

サーキットへ持ち込むと、CS 850GTは最高にゴキゲン。標準のマスタングと異なるだけでなく、アストン マーティンヴァンテージ F1エディションに近いと感じる部分すらある。

フロントタイヤもリアタイヤも路面をしっかり掴み、フロントノーズの動きは感心するほどにシャープ。適切なパワーを加えれば、テールが外に流れ出す。満面の笑顔になるのに、全力は必要ない。

ステアリングホイールは重さが増しているものの、フィーリングは濃い。ホイールベースも長いから、過度な緊張感は求められない。リアタイヤから白煙を上げたまま、ドリフト状態を維持できる。見た目に違わずド派手に。

ゲイリー・ハンダ氏が仕上げたシボレー・カマロ ZL1へ乗り換える。一般道での試乗はできなかったが、サーキットでも収めきれないほどの暴れん坊だ。

ドライビングポジションに優れ、マスタング並みに車内は快適。インテリアデザインは特に変更が加えられていないようだが、より造形的には興味が惹かれる。カマロ ZL1には、MTではなく10速ATが搭載されている。

オールドスクールな荒々しさ

走り始めると、手の入ったシャシーではなく、こちらもドライブトレインからの特別なインパクトに支配された。

CS 850GTではスーパーチャージャーのノイズが充満する一方で、カマロ ZL1は一層ブースト圧が高いにも関わらず、エグゾーストノートが圧倒する。シャシーはより硬くタイトで、ノイズも大きい。オールドスクールな荒々しさだ。

ゲイリー・ハンダ・モディファイド・シボレー・カマロ ZL1(英国仕様)
ゲイリー・ハンダ・モディファイド・シボレー・カマロ ZL1(英国仕様)

縁石や舗装の継ぎ目を越えると、ボディの動きは明らかにより鋭く小さい。ステアリングホイールの操舵感は軽いものの、機敏さでは上。ステアリングを回した向きへ、即座に突き進む。

グランドツアラーやマッスルカーに想像するような柔らかさはない。より高いスポーツ度がある。

ZL1には、2種類のサスペンションが用意されている。標準のマグネティック・ダンパーか、フォードGTのマニュファクチャラーでもあるマルチマティック社が用意する、DSSVと呼ばれる可変バルブを備えたダンパーだ。

ゲイリーのカマロ ZL1には、DSSVダンパーより穏やかなマグネティック・ダンパーが組まれているが、その姿勢制御はとても緻密。ZL1の足まわりは極めてソリッドで、応答性もシャープだ。

直線加速も同様。馬力はCS 850GTより小さい781psで、ATだから、ゲイリーのカマロの方が勢いは穏やかだと想像するかもしれない。だがそれは勘違い。センセーショナルといいたいほど激しく、息を呑むほどに速い。

かなりハードコアで、同じくらいスリリングでもある。間違いなく筋肉質だが、加速時の味わいは異なる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

シボレー・カマロZL1 × サットン・マスタング 比較試乗の前後関係

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