廃プラスチックから水素をつくる方法 燃料電池車の動力源に 環境保護の推進も

公開 : 2022.02.03 06:25  更新 : 2022.11.01 08:41

リサイクルされずに捨てられるプラスチックから水素を取り出す試みが、世界で注目を集め始めています。

埋め立て予定の「プラごみ」からエネルギーを取り出す

地球上の生物にとって最大の脅威はCO2濃度の上昇かもしれないが、地球そのものが直面する人為的な環境問題は決してそれだけではない。

廃プラスチックの話はよくニュースになっているが、埋立地に捨てるのではなく、自動車などの交通機関の動力源として使えるほど純粋な水素燃料にリサイクルしてはどうかという意見が多い。

世界でリサイクルされるプラスチックは、わずか10%とも言われる。
世界でリサイクルされるプラスチックは、わずか10%とも言われる。

英国のハイドロジェン・ユートピア・インターナショナル(HUI)社によると、年間3億6800万トンのプラスチックが生産されているそうだ。その中でリサイクルされたり、責任ある方法で廃棄されたりしているものは比較的少なく、生産量は2030年までに2倍、2050年には5倍になると予想されている。

HUI社は、パワーハウス・エナジー・グループ・インターナショナル社が開発したDMG(Distributed Modular Generation)技術のハンガリー、ポーランド、ギリシャでの独占使用と、その他の地域での非独占使用ライセンスを取得している。パワーハウス社は、リサイクルできるものはリサイクルすべきだが、汚染されたプラスチックはリサイクルが難しく、コストもかかるうえ、リサイクルできる回数にも限りがあるとしている。

件のDMGは、廃棄物を酸素のない状態で強い熱にさらすことでガスに変える熱分解技術である。そのプロセスは、まず埋め立て処理される予定のプラスチック廃棄物を、約1000℃に加熱した炉に投入し、瞬時に溶かして「ガス化」させる。次に酸化剤を加えると、化学反応によって一酸化炭素、二酸化炭素、メタン(天然ガス)、水素を含む合成ガスが発生する。天然ガスで高温炉を立ち上げた後は、そこから発生する合成ガスを少量ずつ動力として利用する。

合成ガスはガスエンジンで燃やすこともでき、その場合、25トンの破砕プラスチックにより2.8MWhの発電が可能だが、別のプロセスで水素を分離することが好ましい。生の状態の水素はタールなどの不純物を含んでおり、燃料電池などでの利用を妨げている。最終工程で水素をきれいにし、純度99.999%の水素を完成させる。副産物として、少量の不活性灰(元の原料の5~10%に相当)と、製油所で使用できる炭化水素を多く含むペーストがある。

HUI社は、ポーランドのコニンに主要工場の建設を計画しており、年内には当局から建設開始の認可が下りる見込みである。同社の生産設備は、40トンのプラスチック廃棄物から2.7トンの純粋な自動車燃料品質の水素を生産することができるようになる。工場に必要な面積はわずか1.5ヘクタール(ラグビー場1.5面分)で、同社によれば、既存の廃棄物処理工場に簡単に増設することができるそうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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