482万8000kmのギネス記録 ボルボP1800 英国版中古車ガイド 北欧美人のクーペ

公開 : 2022.03.07 08:25

歴代ボルボで最も美しいといわれる、P1800。耐久性でも秀でたクラシックだと、英国編集部は評価します。

47年間で482万km以上を走破したP1800

P1800という美しいクーペには、いくつかの驚きがある。まず、四角いイメージが先行しがちなボルボなのに、とても流麗なフォルムを持っている。歴代のボルボのなかで、最も多くの視線を集めるモデルだと思う。

しかも英国中部、バーミンガム郊外のウェスト・ブルミッジで製造されていた時期があった。さらに、もっと驚くような事実も隠し持っている。

ボルボP1800(1960〜1973年/英国仕様)
ボルボP1800(1960〜1973年/英国仕様)

それは、1台のクルマが走行した最長走行距離のギネス記録を、1966年式のP1800 Sが保持しているということ。オーナーのアーヴ・ゴードン氏は、定期的なメンテナンスのみで、目立った不具合もなく40万2300kmを走行したという。

その記録は伸び続け、2013年には482万8000kmという、途方もない距離に到達している。47年の間に。エンジンブロックとトランスミッション・ボックスは、最後まで交換されない状態だったそうだ。

つまりボルボP1800は、手間のかからないクラシックモデルだといっていい。まさに、このギネス記録が物語っている。これに乗れば、クルマ好きの知人も自然と増えるかもしれない。

かつての自動車メーカー、ジェンセン社は、1961年から1963年までP1800をバーミンガム郊外でライセンス生産していた。しかし製造品質に問題があると判断され、スウェーデン西部のヨーテボリへ戻されている。

モデル名は当初P1800だったが、ボルボ自らが生産するようになって以降、1969年まではP1800 Sへ改められた。Sは、スウェーデンの頭文字だ。

乗りやすさで選ぶならインジェクション

英国で生産された最初期型は珍しく、中央部分が角のように立ち上がった、カウホーンと呼ばれるフロントバンパーが目印。エンジンのパワーも、それ以降のモデルより低い。

英国の中古車市場を見ると、7年間生産されたP1800 Sが1番流通量も多い。エンジンはジェンセン時代と同じ、SUキャブレターを載せた1.8L 4気筒ガソリンながら、最高出力が異なる。

ボルボP1800(1960〜1973年/英国仕様)
ボルボP1800(1960〜1973年/英国仕様)

当初102psでスタートしたが、1963年からは110psへ。1966年には116psへパワーアップしている。

燃料インジェクションの登場は、1969年。モデル名もP1800 Eとなった。エンジンは新しい2.0Lユニットになり、130psを達成。ブレーキも四輪ディスクになったほか、多くの改良を受けている。

この後期型P1800 Eは、キャブレターの前期型より乗りやすい。調整不要の燃料インジェクションだし、扱いやすい強力なブレーキも備わっている。さらに状態の良い例でも、英国では1万ポンド(約155万円)ほど価格が安い。

1972年からはクーペボディを改め、シューティングブレークとしたP1800 ESが登場。実用性を大幅に向上させた。こちらも、まれに中古車市場へ出てくることがある。

ボルボP1800シリーズは馬力が控え目だったため、スポーツカーとしての評価は振るわなかった。そのおかげで多くは丁寧に運転され、目立った改造も受けずに済んでいる。

レストア途中のクルマを買う場合は、すべての部品が揃っているか確認したい。仕上げるまでのコストが驚くほど高くなることもあり、入手が難しいスイッチやゴムシール、ビスなどで作業が進まない可能性もある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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