フェラーリ296 GTB試乗 V6で体現した新世代フェラーリ像

公開 : 2022.03.07 08:01

フェラーリ296 GTBに試乗。「環境」という時代の要請に対するフェラーリの解はV6。新世代フェラーリを体感しました。

V6フェラーリは「フェラーリ」なのか?

「V6モデルはホンモノのフェラーリといえるのか」

新開発のV6 3.0Lエンジンを搭載した296 GTBについて、そんな疑問を抱くフェラーリファンは少なくないだろう。

フェラーリ296 GTB
フェラーリ296 GTB

歴史上、「跳ね馬」の紋章を掲げたV6モデルはいずれもレーシングカーで、純然たるロードカーは1台もないとされる。

この大原則を守るため、フェンツォ・フェラーリの夭逝した愛息ディーノが設計したV6エンジンを積むロードカーは、敢えてディーノという別ブランドが用いられたほど。

この、極めて厳格なルールを史上初めて破ったのが、ここで紹介する296 GTBである。

では、なぜフェラーリはV6エンジンを開発したのか?

その理由を、パワートレイン担当のエンジニアに訊ねてみた。

「もともとショートホイールベースのモデルを検討するプロジェクトがあり、これにあわせて全長が短いエンジンの開発に取り組みました。これが第1の理由です」

「第2の理由は効率の改善、つまり燃費の向上です。これは燃料タンクを小さくすることにも(CO2に代表される)エミッションを改善するうえでも効果がありました」

CO2排出量を低減して地球温暖化を防止することは時代の要請である。

これに対応するため、フェラーリはV6エンジン+プラグイン・ハイブリッドの新パワートレインを開発したわけだが、何の工夫もなくこれをスポーツカーに搭載すれば、車重が重くて鈍重なクルマに仕上がるおそれがある。

それを防ぐのがショートホイールベース化だったのだ。

言い換えれば、V6エンジンとショートホイールベースはセットで考案されたコンセプトだといえるだろう。

重量増に対するフェラーリの解

とはいえ、ショートホイールベースにするだけでプラグイン・ハイブリッド化に伴う重量増をすべて帳消しにできるわけではない。

ちなみに296 GTBの乾燥重量は、V8エンジンを積むF8トリブートより140kgも重い。

フェラーリ296 GTB
フェラーリ296 GTB

これを50mmのホイールベース短縮だけで解消するのは無理があるというものだ。

スポーツカーとしての軽快さを保つためにフェラーリが取り組んだもう1つの工夫は、低重心化にあったといっていい。

レーシングカーを例に挙げるまでもなく、重心の低いマシンはハンドリングがより機敏になる。

296 GTBではVバンク角を120度と広く設定してエンジン単体の低重心化を実現。

さらに、SF90ストラダーレで登場した新開発8段DCTのコンパクトなクラッチ径を活用することで、エンジンの搭載位置を極限まで低くし、低重心化を促進したのだ。

そして、これは試乗して気づいたことだが、ステアリングやスロットルペダルの操作に必要な力を軽くすることで、感覚面からも軽快感を演出しようとしている。

いっぽうで、ショートホイールベース化で懸念されるスタビリティの低下はサスペンションの設定やタイヤの特性によって最低限に留めるとともに、これまで以上にスムーズで高精度に作動するスタビリティコントロールによってスピンという最悪の事態を防ごうとしたことが、技術陣への取材から明らかになった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    大谷達也

    Tatsuya Otani

    1961年生まれ。大学で工学を学んだのち、順調に電機メーカーの研究所に勤務するも、明確に説明できない理由により、某月刊自動車雑誌の編集部員へと転身。そこで20年を過ごした後、またもや明確に説明できない理由により退職し、フリーランスとなる。それから早10数年、いまも路頭に迷わずに済んでいるのは、慈悲深い関係者の皆さまの思し召しであると感謝の毎日を過ごしている。

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