時代の最高速モデル 2010年代 ブガッティ・シロン・スーパースポーツ 300+ 大改良で490.5km/h

公開 : 2022.05.01 07:05

クルマの性能を端的に表す指標の1つ、最高速度。過去100年間を振り返り、各年代の最速モデルをご紹介します。

基本的にはヴェイロンの大改良版

丁度1か月前、アンディ・ウォレス氏とドニントン・パーク・サーキットのピット裏ですれ違った。筆者が挨拶すると、笑顔でうなずいてくれた。だが、その時は名前がすぐに出てこなかった。

レーシングドライバーの彼は、ル・マン24時間レースでの優勝経験を持つ。そして、最速の量産モデルを運転した男でもある。

ブガッティ・シロン(欧州仕様)
ブガッティ・シロン(欧州仕様)

2019年8月、フォルクスワーゲンが保有するドイツ・エーラレッシエン・テストコースで、ウォレスは時速304.77マイル、490.5km/hまで加速した。ブガッティ・シロン・スーパースポーツ 300+で。

このシロン・スーパースポーツ 300+の量産版は30台の限定生産で、すべてが完売済み。ただし、その最高速度は速すぎるという理由で欧州では認証を得ていない。439km/hでリミッターが掛けられている。

とはいえピュアスポーツでも、量産版のスーパースポーツでも、ブガッティ・シロンが2010年代の最速量産モデルであることに違いはない。標準のシロンの最高速度が420.0km/hに制限されていたとしても、桁違いに速いことは明らかだ。

ブガッティ・シロンが発表されたのは、2016年3月のジュネーブ・モーターショー。基本的にはヴェイロンの大改良版といえ、W型16気筒エンジンの構成や排気量、トランスミッション、シャシー構造などに目立った違いはない。

0-400km/h加速32.6秒、400-0km/h減速9.4秒

しかし、より高い速度を追求し、エンジンは大幅にパワーアップ。1201psのヴェイロン・スーパースポーツ用ユニットをベースに、クランクとコンロッドを強化。4基のターボも大型のものに変更されている。

一般的に、ターボを大きくするとターボラグも増えてしまう。だが、3800rpm未満ではツインターボとして動かし、それ以上の回転域ではクワッドターボとすることで、最小限に抑えることを可能とした。

ブガッティ・シロン(欧州仕様)
ブガッティ・シロン(欧州仕様)

目指す速度域が高くなったことに合わせ、ブレーキも大径化。ヴェイロンから前後ともにブレーキディスクは20mm直径が大きくなり、フロントが420mm、リアが400mmとなった。キャリパーはフロントが8ポッド、リアが6ポッドだ。

スタイリングはイチから描き直され、Cのラインを模した大胆なボディサイドの造形が特長。その曲線に合わせて巨大なエアインテークが口を開き、エンジンを冷却させている。

ボディはカーボンファイバー製で、ねじり剛性は5万Nmの力で1度歪むという強靭さ。曲げ剛性も凄まじく、1tを加えて0.25mmしか変形しないという。

果たして、シロンの能力は圧倒されるものとなった。最高出力は1500ps/6700rpm、最大トルクは162.8kg-m/2000-6000rpmを達成。一般的な乗用車の10台分に当たる。

その能力を検証するために雇われたのが、元F1ドライバーのファン・パブロ・モントーヤ氏。ブガッティのテストコースで、0-400km/h加速32.6秒、400-0km/h減速9.4秒という、驚愕の数字を残した。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    オルガン・コーダル

    Olgun Kordal

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

時代の最高速マシン 100年を振り返る 1920年代から2010年代までの前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

ブガッティの人気画像