「直列8気筒」が生んだエレガントな自動車 30選 前編 戦前戦後の高性能モデル

公開 : 2024.08.25 18:05

今では「直列8気筒」の自動車用エンジンを見ることは非常に稀である。シリンダーを一直線に8本並べた非常に長いエンジンで、優雅なロングボンネットのシルエットを生み出した。

今となっては珍しい「直8」

新しいエンジンレイアウトが一度人気になると、非常に長く支持され続ける傾向がある。しかし、8本のシリンダーが一列に並んでいる直列8気筒エンジンは、珍しい例外である。

直8のレイアウトは第一次世界大戦直後に導入され、欧州と北米で市販車および競技車両(コンペティションカー)の両方に広く採用された。

直8エンジンを搭載した市販モデルを年代順に紹介する。
直8エンジンを搭載した市販モデルを年代順に紹介する。

直列8気筒エンジン

今ではこのようなレイアウトを見ることは非常に稀である。それにはエンジンが長いというパッケージングの問題や、すべてのシリンダーに効率よく均等に燃料を供給することの難しさなど、さまざまな理由がある。しかし、直8ほど素晴らしいサウンドを奏でるエンジンは他にない。

あらゆるエンジンレイアウトの中でも群を抜いて壮大な直8に敬意を表し、これを搭載した29台の市販車と、その後に登場したコンセプトカーを年代順に紹介しよう。

直列8気筒
直列8気筒

イソッタ・フラスキーニ・ティーポ8(1919年)

一般に販売された最初の直列8気筒エンジン搭載車として認知されているのが、ティーポ8(Tipo 8)だ。イタリアのイソッタ・フラスキーニ(Isotta Fraschini)社は排気量5.9Lの直8エンジンを開発し、第一次世界大戦後初の自動車として発売。ライバルであるロールス・ロイスやイスパノ・スイザに対抗する高級車であった。

排気量は後に7.4Lに拡大され、ティーポ8Aと8Bに搭載されたが、後者は1930年代の世界恐慌によって市場を失った。

イソッタ・フラスキーニ・ティーポ8(1919年)
イソッタ・フラスキーニ・ティーポ8(1919年)

レイランド・エイト(1920年)

イソッタ・フラスキーニが直8の新たなライバルとして迎えたのが、英国のレイランド(Leyland)が投入したエイト(Eight)だ。後に陸上速度記録を樹立し、記録挑戦中に事故死したジョン・パリー=トーマス(1884~1927年)をチーフエンジニアに迎えて誕生したエイトは、当初6.9Lエンジンを搭載していた。

イソッタ・フラスキーニ社と同様、レイランドも排気量拡大の必要性を感じ、1921年には7.3Lへ拡大したが、その2年後には生産を中止した。

レイランド・エイト(1920年)
レイランド・エイト(1920年)

デューセンバーグ・モデルA(1921年)

米国車として初めて直8を搭載したモデルA(Model A)は、当初は単に「ストレート・エイト」と呼ばれていた。排気量4.3Lで、1気筒あたり2つのバルブを使用するオーバーヘッドカムシャフトを備えている。

デューセンバーグ(Duesenberg)は後のモデルJで、1気筒あたり2つのカムと4つのバルブを備えた7.0L直8を導入する。後継車に駆逐されたとはいえ、モデルAは当時、高速の高級車として高く評価されていた。

デューセンバーグ・モデルA(1921年)
デューセンバーグ・モデルA(1921年)

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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