兄弟エンジンの軽量スポーツ RRのアルピーヌA310 x MRのロータス・ヨーロッパ 後編

公開 : 2022.05.08 07:06  更新 : 2022.08.08 07:11

MTの感触を忘れるほど気持ちが良い

ギア比は長めで、活発に走らせるには高速道路でも4速が良い。ヨーロッパとは異なりシフトフィールが正確で好感触だから、頻繁に変速が必要だとしても不快には感じない。リア寄りの重量配分らしく、時々むずがるような仕草を見せる。

5速MTは基本的に2台で共通だが、エンジンの前か後ろかで、リンクの長さが変わる。ミドシップのヨーロッパの方が長く、微妙な調整が必要になる。だとしても、走りは爽快。

ロータス・ヨーロッパ・スペシャル(1972〜1975年/英国仕様)
ロータス・ヨーロッパ・スペシャル(1972〜1975年/英国仕様)

ストレートでもカーブでも、冴えないシフトフィールなど忘れてしまう。エンジンは鋭く吹け上がり、一気にクラッチをつなげばブラックマークを残しながら、野蛮な加速も披露する。120km/h位までは、フェラーリ・ディーノ 246のように勢いがある。

今回のエンジンはリビルドされたばかりで、高めの回転域までは許されていない。甘美なサウンドを楽しめるから、強い自制心が求められる。低回転域でも、アルピーヌのように粘り強い。早めのシフトアップも受け入れてくれる。

ヨーロッパの低い着座位置が、一層スピード感を高める。機敏な走りに、周囲の交通が邪魔にすら思えてしまう。

現代的なクルマと比べるとタイヤは驚くほど細いが、グリップ力は極めて高い。軽くダイレクトな操舵感と相まって、意のままにヨーロッパの進路を決めていける。

アンダーステアもボディロールも生じない。タイトコーナーでも、ブレーキングの必要性を感じない。路面が荒れていても構わない。乗り心地も、うれしいほどに滑らかだ。

欲しいと思わせるA310の訴求力

操縦性では、A310もヨーロッパへ肉薄している。しかし特性が異なり、高速域へ重点が置かれた印象。ロックトゥロックが2.5回転のステアリングは、初め重いものの、速度の上昇とともに軽くなる。

太めのリムへ、正確な情報が伝わる。身軽でありながら、乗り心地はグランドツアラー・ライク。ブレーキはヨーロッパと同様に前後ともにディスクで、効きは優れたスポーツカー級だ。

アルピーヌ・ルノーA310(1971〜1976年/欧州仕様)
アルピーヌ・ルノーA310(1971〜1976年/欧州仕様)

A310も公道で必要とされる以上に、清々しいほど小気味よく旋回する。フラットでニュートラルで、ヒヤリとする瞬間もほぼない。エンジンは意図どおりにパワーを生み出し、ブレーキの出番も少ない。

コーナリングスピードを高めていくか、急にアクセルペダルを戻すと、アンダーステアからオーバーステアへ切り替わる。その瞬間、ドライバーが試される、リアが重いという物理の法則が待っている。

ロータス・ヨーロッパ・スペシャルは、いつくかの弱点を上回る天才的な能力を持ち合わせている。ドライバーの若い気持ちを、永遠に保ってくれるようなクルマだ。筆者の心もくすぐってくれた。

アルピーヌ・ルノーA310は、近づきやすく奥行きのある、エキサイティングなスポーツカー。A310は英国へ正規輸入されなかったが、6灯のライトが並んだフロントマスクがゴージャスで強い印象を残してくれた。

シトロエンSMにも通じる、1970年代のシックさとスポーツカーという組み合わせは、唯一無二。素晴らしいヨーロッパ・スペシャルとは別の訴求力がある。欲しいという気持ちを抱かせるほど。

協力:ジャスティン・バンクス社、UKスポーツカーズ社

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • ウィル・ウイリアムズ

    Will Williams

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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