これまでと明らかに違う走り アウディSQ6 eトロン 試作車へ試乗 リア主導の517ps

公開 : 2023.08.03 08:25  更新 : 2023.09.22 18:45

SQ8の弟に当たる、電動SUVが登場。リアアクスル主導の新しいDNAを持つSQ6を、英国編集部がひと足先に味見しました。

ツインモーターで517ps 素直で高精度な走り

アウディのエンジニアは、自社の高性能モデルが宿す圧倒的な動力性能や、視覚的なドラマチックさには自負があるようだ。だが、ステアリングの感触やドライビング体験の一体感で、ライバルへ一歩及ばないという評価があることも認めている。

その強みを生んでいたカリスマ的な内燃エンジンは、駆動用モーターとバッテリーへ置き換えられる運命にある。自社が誇る「S」や「RS」の称号を、単なるトリムグレードの1つへ軽んじさせないためには、弱みを克服することが求められる。

アウディSQ6 eトロン・プロトタイプ
アウディSQ6 eトロン・プロトタイプ

アウディは、ブランドのバッテリーEVを牽引する、SQ8 eトロンでその可能性を模索している。それに続く高性能SUV、SQ6 eトロンには、一層の期待が込められているに違いない。

既に試乗レポートをお伝えしているSQ8 eトロンは、フロントアクスルに1基、リアアクスルに2基、合計3基の駆動用モーターを搭載。システム合計で、503psという最高出力を叶えている。

他方、このSQ6 eトロンは一般的なツインモーター。それでも、システム総合での最高出力は517psまで高められている。シンプルな構成のおかげで、前後アクスルで展開されるトルクの制御が容易になり、従来より素直で高精度な走りを引き出したという。

過去のアウディと明らかに違うコーナリング

ドライバーへ強い自信を抱かせるような、優れた操縦性も狙われている。バランスに長けた、一体感の強いドライビング体験にもフォーカスが向けられた。新しいアウディのDNAが組み込まれた、電動SUVといえそうだ。

四輪駆動システムのクワトロは、中速域で積極的に運転している場面では、リア側の駆動用モーターが多くのパワーを生み出すようチューニングされたという。同時に120km/h以上での走行時は、安定していた方が望ましいとも技術者は話す。

アウディSQ6 eトロン・プロトタイプ
アウディSQ6 eトロン・プロトタイプ

その結果、コーナリング時の挙動や脱出加速時の振る舞いは、筆者がこれまで運転してきたアウディとは明らかに違う。今回の試乗車はプロトタイプで、許された速度や時間は限定的だったが、フロントからリアへパワーが推移する様子を体感できた。

コーナー出口ではアクセルペダルの塩梅で、徐々に直進状態へスタンスを調整することも可能になっている。効果的にフロントアクスルを機能させ、鋭い加速へ結び付けられるようだ。

アウディのドライブトレインの技術者は、シャシー担当の技術者と緊密に連携して開発を進めたとか。手のひらを通じて強い一体感をもたらすため、子細に調整を加えたというが、その成果も表れている。

切り始めから、路面とタイヤが接続している粘りのような手応えがあり、知覚的な印象も確かに濃くなっている。特に、ドライブモードをダイナミックにすると。

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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