売れ筋Q5がバッテリーEVへ アウディQ6 eトロン 試作車へ試乗 ポルシェと共同開発

公開 : 2023.08.19 08:25

電動パワートレイン版のQ5、Q6が完成間際。バランスの取れた走りと、競争力の高いパワートレインを獲得するようです。

ポルシェと共同開発されたアーキテクチャ

高性能モデルに長けたポルシェと、人間工学や実用性に長けたアウディがコラボすると、大抵は素晴らしい結果が生まれる。1995年に発売されたアウディRS2 アバントは、ファミリーワゴンとドライバーズカーが両立することを、見事に体現していた。

ポルシェ・タイカンと技術を共有するアウディeトロンGTも、現在の市場では最も魅力的な電動サルーンとして、ライバルをリードする内容にある。恐らく、同じプラットフォームで成り立つタイカンの次に。

アウディQ6 eトロン55 プロトタイプ
アウディQ6 eトロン55 プロトタイプ

これらの事実は、両社が4年を費やして開発を進めてきた電気自動車用の新プラットフォーム、PPEアーキテクチャに対する期待を高める。主にプレミアム・ブランドでの展開となり、フォルクスワーゲンのモデルには利用が想定されていないという。

PPEアーキテクチャの設計は、フォルクスワーゲン・グループが活用しているMEBアーキテクチャから影響を受けている。だが、より大型で高速で、ダイナミックな走りのバッテリーEVへ対応するよう仕上げられた。

現在以上に、アウディとポルシェのアイデンティティを差別化することが目指されている。その口火を切るのが、2024年初頭に欧州での販売がスタートする、アウディQ6 eトロンだ。

今後控えている、ポルシェ・マカンのバッテリーEV版と兄弟関係に当たるSUVで、現行のQ4 eトロンQ8 eトロンのギャップを埋める役割を果たす。内燃エンジンで走るQ5の、バッテリーEV版ともいえる。

最高出力は401ps 航続距離は600km以上

ここまでの道のりは、平坦なものではなかった。本来、Q6 eトロンとポルシェe-マカンは、2023年にはディーラーへ並ぶ予定だった。しかしソフトウェアの不具合など、いくつかの要因でスケジュールが遅れ現在に至る。

それでも、今回試乗したプロトタイプのQ6 eトロンは、開発の90%が完了しているという。シャシーやドライブトレインなどは、ほぼ量産仕様に近いらしい。ボディには、カラフルなカモフラージュが施されていたけれど。

アウディQ6 eトロン55 プロトタイプ
アウディQ6 eトロン55 プロトタイプ

Q6 eトロンは、アウディが電動SUV市場で最も重要だと考えるセグメントに属する。好調に売れているQ5から、もたつかずにバトンを受け継ぐことはできるだろうか。

試乗車のグレードは「55」で、フロントに非同期モーター、リアに永久磁石同期モーターが搭載された四輪駆動。どちらも自社開発され、2基合計の最高出力は401psがうたわれる。

フロア部分に敷き詰められる駆動用バッテリーの容量は、約100kWh。パワートレインは電圧800Vで制御し、急速充電能力は270kWまで対応する。

航続距離は600km以上と主張されるが、その実現のために、技術者はシステムの設計を徹底的に煮詰めたという。例えば、エネルギー効率に優れたシリコンカーバイド半導体が、広範囲に採用されている。

駆動用モーター内部のコイルのワイヤーも、円形ではなく正方形の断面とすることで、隙間を減らし高効率化。駆動用バッテリーは、ニッケル、マンガン、コバルトを正極材に用いた三元系(NMC)で、直方体のセルにし高密度化させている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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