最新車種の「弱点」突くリレーアタック 装置の販売サイト取り締まりへ 英国

公開 : 2023.12.05 18:05

・自動車盗難が急増する英国で、リレーアタック装置が公然と販売されている。
・盗まれた13万台のうち、93%がキーを使わずに被害に遭っている。
・キーフォブの信号中継機、ついにオンラインの販売サイト取り締まりへ。

リレーアタック装置の禁止へ動く英国

自動車盗難の手口として頻繁に用いられる「リレーアタック」用の装置は、オンラインで公然と宣伝・販売されている。

英国では近年、自動車の盗難被害が急増しており、そのうちの9割がこうした装置による被害と見られている。11月7日には、国王演説で装置の違法化が提案されるまでになった。

リレーアタックに用いられる信号中継機などが英国では公然と販売されている。
リレーアタックに用いられる信号中継機などが英国では公然と販売されている。

この法案は、リレーアタックなど自動車盗難に用いられる装置の製造、改造、供給、輸入、所持を違法とし、最高5年の懲役刑を科すというもの。英国における自動車盗難発生件数は、2022年に前年比25%増の13万389件を記録している。

英国のカーセキュリティ会社、トラッカー・ネットワークUKの最新データによると、同社が回収した全車両の93%が、所有者のキーが使用されずに盗難に遭っているという。

キーフォブなしでどう盗まれる?

リレーアタックは、1人の窃盗犯が所有者の敷地近くでキーフォブからの信号を捕らえ、受信機を持って車両のそばに立っている共犯者にリレーし、ロックを解除して盗むという手法だ。信号の中継装置はオンラインで100ポンド(約1万8500円)から購入できる。

本誌は、車両を完全制御する装置を販売するウェブサイトを見たことがある。しかし、そうした高度な装置はCAN-BUS(車両のマイクロコントローラーとプロセッサーが相互通信するための配線システム)に接続する必要があり、値段もかなり高価である。

物理キーを使わない「スマートキー」が普及した今、その弱点を突くように被害が急増している。
物理キーを使わない「スマートキー」が普及した今、その弱点を突くように被害が急増している。

最新世代のフェラーリランボルギーニレンジローバーなど、ほとんどの車種に対応する装置が、2500ポンド(約45万円)から3万ポンド(約555万円)で販売されている。

手口はリレーアタックだけじゃない

英国の保険業界が出資する自動車関連NPO法人、サッチャム・リサーチの車両犯罪セキュリティ部門のスティーブ・ランチベリー氏は、CAN-BUSに直接接続することで、キーフォブがなくても、またその信号を中継しなくても、車両ロックを解除したり始動させたりすることができると説明した。車両を制御するのに必要なすべてのデータが、この装置に含まれているという。

しかし、CAN-BUSへのアクセスは必ずしも容易ではない。

キーを使わず、車両の配線に直接侵入する手口も後を絶たない。
キーを使わず、車両の配線に直接侵入する手口も後を絶たない。

「最近の傾向としては、窃盗犯が車両のボディパネルを切り取ってCANにアクセスするケースが見られます。わたし達はメーカーと協議し、ハーネスの経路を迂回させたり、トランクの中に入れたり、ハーネスを分離したりして、装置による完全なアクセスを防ごうとしています」

さらに、サッチャム・リサーチは英国内務省と協力し、装置の販売と流通を規制するレギュレーション作りを進めているという。

記事に関わった人々

  • ジョン・エバンス

    John Evans

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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