日本は「盗難車天国」? やられ損、脱する術は 国会へ法案提出 岸田総理「前向き」

公開 : 2023.06.01 17:15

自動車盗が検挙されるケースは非常に低いです。全国で平均すると45.6%(2022年)。そして刑事事件となり裁判がおこなわれたとして課せられる量刑は非常に軽いです。このような中、自動車盗難に関する法規制を強化しようと国会に2本の法案が提出されました。

窃盗犯に優しい国 日本は盗難車天国か

大切に維持してきた愛車がある日突然、姿を消す。何者かによって奪われ、切り刻まれ、そして数か月後に国内外のフリーマーケットサイトやネットオークションなどで販売されていることを知る被害者も少なくない。

長い付き合いの中で手間暇かけて仕上げてきたクルマであればなおさら、その衝撃の大きさと悲しみの深さは想像を絶する。

しかし、自動車盗が検挙されるケースは非常に低い。全国で平均すると45.6%(2022年)。盗難多発の茨城県は24%、愛知県は22.5%と盗難が多い場所は全国平均の半分程度の検挙率である。

そして刑事事件となり裁判がおこなわれたとして課せられる量刑は非常に軽い。過去に数十億円の自動車盗を働くなど複数の前科がある場合でも求刑はせいぜい5〜6年だ。実際に収監される期間はもっと少ないと言われている。出所して、ふたたび自動車窃盗を繰り返す彼らに罪の意識など皆無だ。

また、窃盗犯が検挙されたとしてもクルマが返ってくることは非常にまれである。切り刻んで海外に部品として輸出してしまえば、その先を追うのは難しいからだ。

ネットオークションで国内流通していた場合も売りに出された盗品が本当に被害者のものなのか? 被害者本人が買い戻したとしてもなかなか証明できない。

盗まれる側が悪いとは言いたくないが実際に自動車盗の被害者に話を聞くと、盗まれないための防犯対策が施錠のみだったり、数分で切断されるハンドルロックやタイヤロックだったり……という場合もある。純正セキュリティもほとんど頼りにならない。

窃盗犯にしてみれば、危機管理対策がおろそかになっているクルマは盗みやすく、盗品は高値で流通できて検挙率も低い、万が一検挙されて裁判となっても罪は非常に軽く、すぐ出所できてまた美味しい自動車盗を繰り返す……。まさに、いまの日本は自動車盗天国と言える状況なのである。

明らかに盗難車だとわかって買い取った業者も「盗難車だとは知らなかった」と言えば無罪放免だ。

自動車盗難対策に関する法案 国会に提出

このような中、自動車盗難に関する法規制を強化しようと国会に2本の法案が提出された。

5月12日、国民民主党と日本維新の会が共同で参議院に提出したもので、法案の名称は「自動車盗難対策等の推進に関する法律案」(自動車盗難対策法案)と「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案」(組織犯罪厳罰化法案)となる。

どのような内容なのか。

国民民主党の公式サイトには以下のことが記されている。

「組織的な窃盗は役割分担をした上で犯行に及ぶことが多く、盗難品の運搬や隠匿、売却等が速やかになされることから被害回復が困難な状況に直面している」

「特に自動車は高額なことから、窃盗事犯の抑止や盗難車及びその部品の流通把握、被害品の取戻し支援を明文化し、自動車等を中心とした盗難についての対策の実施と早期の被害回復を図る自動車盗難対策法案を新規に立法した」

「具体的には国や地方公共団体に対し、自動車窃盗等の取り締まりの強化/迅速化に加えて、違法ヤードの運営抑止、盗難自動車並びにその部品の流通/輸出の防止等を責務として定めるものである」

「組織犯罪厳罰化法案は、組織的犯罪処罰法と刑事訴訟法を改正し、組織的な犯罪の厳罰化や、証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度(日本版司法取引)の対象拡大をおこなうものである」

法案提出に至った経緯について触れておきたい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    加藤久美子

    Kumiko Kato

    「クルマで悲しい目にあった人の声を伝えたい」という思いから、盗難/詐欺/横領/交通事故など物騒なテーマの執筆が近年は急増中。自動車メディア以外ではFRIDAY他週刊誌にも多数寄稿。現在の愛車は27万km走行、1998年登録のアルファ・ロメオ916スパイダー。クルマ英才教育を施してきた息子がおなかにいる時からの愛車で思い出が多すぎて手放せないのが悩み。

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