コルベット用V8から678ps キャデラックCT5-V ブラックウィングへ試乗 M5キラー

公開 : 2022.03.24 08:25

キャデラックからBMW M5キラーが登場。ブランドの内燃エンジンを締めくくる豪腕サルーンを、英国編集部が評価しました。

コルベットZ06用V8をチューニング

シボレーのスモールブロックV8をフロントに押し込んだ、ゼネラル・モーターズ渾身のスーパーサルーンが誕生した。その名も、キャデラックCT5-V ブラックウィング。BMW M5 CSに対する、挑戦状といえるだろう。

キャデラックは近い将来、純EVに特化したブランドになる。既にクロスオーバーの次期モデル、リリックが2023年に控えている。ラグジュアリーなSUVが、今後複数台展開される見込みだ。

キャデラックCT5-V ブラックウィング(北米仕様)
キャデラックCT5-V ブラックウィング(北米仕様)

それまでの短い期間、内燃エンジンの最後の蜜を楽しめるように、このブラックウィングが届けられた。ボンネットの内側に宿るのは、C7世代のコルベットZ06に搭載されたLT4ユニット。6.2Lの排気量を、イートン社製のスーパーチャージャーで過給する。

このV8エンジンは、初めから軽量なチタン製バルブと鍛造のコネクティングロッド、ピストンなどで武装済み。さらに冷却系と吸気系を見直すことで、最高出力678psと最大トルク90.9kg-mを発揮する。つまり、C7コルベット以上にパワフルというわけ。

キャデラックがライバル視するBMW M5 CSの場合、635psと76.3kg-mだから、その差は小さくない。0-97km/h加速時間は、3.0秒に対して3.6秒と逆転するけれど。

最新の競合モデルでは珍しい装備となるのが、3ペダルの6速マニュアル。GMとフォードの共同開発による10速オートマティックも選択できるが、ここはやはり、オールドスクールなMTを選びたいところ。クルマ好きとの話題も増えるだろう。

カーボンセラミック・ブレーキも搭載可

6速MTの操作感は、非常に滑らか。ここまでパワフルな後輪駆動モデルなら想定できる、駆動系の荒々しさも伝わってこない。クラッチペダルも軽く踏め、つながりは漸進的。かつての日本車のようだ。

現代モデルらしく、シフトダウン時に回転数を合わせてくれるレブマッチ機能と、フルスロットルのままシフトアップできる、フラットシフト機能も付く。ただし、極端に太い最大トルクを鑑みて、フラットシフトを試す勇気はなかった。

キャデラックCT5-V ブラックウィング(北米仕様)
キャデラックCT5-V ブラックウィング(北米仕様)

678psのCT5-V ブラックウィングは後輪駆動のみで、四輪駆動は選択できない。BMWの技術者の多くは550馬力以上のクルマには四輪駆動が必要だと話すが、少なくともドライ・コンディションの限り、ブラックウィングのトラクションは見事といえる。

シャシーには、電子制御のリミテッドスリップ・デフに加えて、GM最新のマグネティックライド・コントロールと呼ばれるアダプティブダンパーが搭載されている。タイヤは専用開発のミシュラン・パイロットスポーツ4Sを履く。

これでも足りないというドライバーに向けて、カーボンセラミック・ブレーキも104万円程度で追加できる。充分に温まる前でも、信じられないような制動力を生み出す。ポルシェ911のGTシリーズにも匹敵すると思う。29kgの軽量化にもつながる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ピアス・ワード

    Piers Ward

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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