「美貌とギャップ」で夢中にする! アストン マーティンDB12 ヴォランテへ試乗 調和しきれない怒涛の加速

公開 : 2024.05.02 19:05

伝統ブランドのグランドツアラーへ、オープンのヴォランテが登場 アストンのイメージへ調和しきれない怒涛の加速 シャシー本来の動的能力を開放 英国編集部が評価

ブランドイメージへ調和しきれない怒涛の加速

約20万ポンド(約3840万円)するアストン マーティンDB12のスタイリングは、極めてエレガント。ドアを開いてシートへ身を委ねれば、レザーで覆われたインテリアへうっとりする。ソフトトップを後方へたためば、春風を直接感じられる。

しかし、そんな上品な時間も束の間。ひとたびアクセルペダルへ力を込めれば、怒涛の直線加速を繰り出す。美しい咆哮を響かせ8500rpmまで回る、バルケッタフェラーリF50もたじろぐだろう。

アストン マーティンDB12 ヴォランテ(英国仕様)
アストン マーティンDB12 ヴォランテ(英国仕様)

色っぽいアストンマーティン流のスタイリングやインテリアに、メルセデスAMG由来の4.0L V型8気筒ツインターボエンジンが載っている。その容赦ない走りっぷりは、英国伝統ブランドのイメージへ調和しきれていないかもしれない。

これは、フェラーリのCEOからアストンマーティンのCEOへ転職した、御年78歳のアメデオ・フェリーサ氏の影響に違いない。マラネロで製品開発責任者の職にあった1990年代には、F1マシンからスーパーカーの創出まで、重要な役割を果たしてきた人物だ。

ワイルドなDB12 ヴォランテの走りにも、彼は満足しているはず。もうすぐCEOの座は、DB12の開発で最終段階を監督したベントレーの元CEO、エイドリアン・ホールマーク氏が引き継ぐ予定にあるけれど。

シャシー本来の動的能力が解き放たれた

フェリーサによる新体制のもと、DB11では510psと70.9kg-mを発揮していたV8ツインターボは、DB12では680psと81.4kg-mへ大幅に増強された。大きなターボチャージャーと調整されたカムシャフト、新しいECUを獲得した成果として。

車重は、クーペならDB11と変わりない。ヴォランテでの比較では、18kg重くなった程度だ。その結果、必然的に動力性能はプラスされたパワーのぶんだけ引き上げられた。アストンマーティンを好む人なら、嫌いではないはずだ。

アストン マーティンDB12 ヴォランテ(英国仕様)
アストン マーティンDB12 ヴォランテ(英国仕様)

金属製のルーフが切り落とされても、DB12の走りは極上。タイヤは、際限ないほどグリップするミシュラン・パイロットスポーツ5。重すぎない車重と豊満な馬力が組み合わさり、シャシー本来の動的能力が解き放たれたといっていいだろう。

ヴォランテではフロントタイヤがワイドになり、接地面が増えたことで、ステアリングへ伝わる感触は多少減じたかもしれない。リアタイヤは、110kgも軽いクーペより奔放にスライドするかもしれない。それでも、真のドライバーズカーだ。

電子制御される、リミテッドスリップ・デフも新アイテム。アスファルトが濡れていたり、傷んだ状態では充分に楽しめないものの、好条件ならシャープで安定したコーナリングを堪能できる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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