どろどろ悪路 走らせてみた(後編) ジープ・ラングラー

公開 : 2023.08.01 17:20

ジープの悪路試乗。前編の主役はジープ・ラングラーです。

ラングラーに難所なし

興味深いことに、今回は2台のラングラー・アンリミテッド・サハラがそれぞれ異なるタイヤを、BFグッドリッジのトレイルテレイン仕様とオールテレイン仕様を装着していた。

試乗時間内で車両を交換することで、同じ車種でオフロードタイヤの違いによるドライバビリティの相違をはっきり体感できた。

富士ヶ峯オフロードの難所が、はっきりいって難所とは感じられないほどだった。
富士ヶ峯オフロードの難所が、はっきりいって難所とは感じられないほどだった。

平時なら2Hに入っているはずのトランスファーを4Lに入れた状態で、オフロードでのラングラーの走りの印象は、頼もしいの一言につきる。

動画などで観ていた富士ヶ峯オフロードの難所が、はっきりいって難所とは感じられないほどだった。

歴代ラングラーの定番だったV6に対し、2Lターボは鼻先の軽量さに優れつつ、40.8kg-m/272psのトルク&出力は滑らかかつシュアですらある。

単に走破性に優れるだけでなく、あらゆる不整路面に対してゆっくり優しくトルクと駆動力をかけられ、結果として安定感と安心が生まれるのだ。

例えばヒルディセントコントロールを使って急斜面を下りる時。ATレバーをMTモード側に倒してボタンを押すだけで、ドライバーはアクセルやブレーキといったペダル操作一切を気にせず、手元のステアリングに集中でき、加えてシフトレバーを+―操作することで下っていく速度を約1~8km/hの7段階で選べる。

4輪各々にブレーキをかけて姿勢を制御することで、リア側が「ロールバック」して転げ落ちることを防ぐ訳だが、同じく急斜面での姿勢の安定制御の応用として、登り坂でも同じ手順で、ヒルアセントコントロールに任せることもできる。

こちらもドライバーはペダル操作を任せたまま、坂の途中からでもステアリング操作だけで登り切れた。多分にフールプルーフ的ではあるが、人間は左右輪に別々でブレーキをかけられない以上、状況が際どくなるほどに頼もしい機能だろう。

オフロードタイヤの選択

ただ、機械的なキャパシティがあってこそデジタルな制御も活きるのは間違いない。スタビライザーリンクの解除された足まわりで、モーグル路でわざわざ難しいコース取りを選んで、ようやくラングラーは対角線スタックの姿勢になった。

でも、ほんの少しステアリングをこじっただけで、難なく路面を捉え、前に進んでしまうのだが。

ジープ・ラングラー
ジープ・ラングラー

パワートレインから駆動軸、足まわりまで定評あるラングラーで、やはり走破性の分かれ目となるのは先述の通り、オフロードタイヤの選択だ。

じつはラングラー・アンリミテッド・サハラ2.0は、多くの市販SUVやクロカンがそうしている通り、燃費値やCO2排出値が低めとなるオンロード寄りの選択肢として、純正ではオールシーズンタイヤを履く。逆にラングラー・アンリミテッド・ルビコンは純正でマッドテレインタイヤを装着している。

今回の試乗ではまずトレイルテレイン装着のサハラを走らせたが、試乗コースの全セクションはもちろん走破できるものの、それなりに細かなアクセルワークを要し、デフがミュイーンミュイーンと空転するメカニカルノイズが少なからず聞こえていた。

ところがオールテレインタイヤ装着のサハラに乗り換えたところ、明らかに路面に対するグリップ感がワンランク上がった。全体として縦方向のグリップが一段強まり、急な上り坂などコース上で滑るスポットは同じでも、地面を掴んで前に進む瞬間のトラクションが強く出るのだ。

滑って静止する前に探り気味に吹かすと、エンジン回転が落ちる間にグリップ回復して、そのまま登り切れてしまう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    南陽一浩

    Kazuhiro Nanyo

    1971年生まれ。慶応義塾大学文学部卒業。ネコ・パブリッシングを経てフリーに。2001年渡仏。ランス・シャンパーニュ・アルデンヌ大学で修士号取得。2005年パリに移る。おもに自動車やファッション/旅や食/美術関連で日仏独の雑誌に寄稿。2台のルノー5と505、エグザンティア等を乗り継ぎ、2014年に帰国。愛車はC5世代のA6。AJAJ会員。
  • 撮影

    小川和美

    Kazuyoshi Ogawa

    1986年生まれ。クルマ好きの父親のDNAをしっかり受け継ぎ、トミカ/ミニ四駆/プラモデルと男の子の好きなモノにどっぷり浸かった幼少期を過ごす。成人後、往年の自動車写真家の作品に感銘を受け、フォトグラファーのキャリアをスタート。個人のSNSで発信していたアートワークがAUTOCAR編集部との出会いとなり、その2日後には自動車メディア初仕事となった。

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