コラム&エッセイ

2017.02.26

クルマ漬けの毎日から

スモール・アルファは何処へ

I believe there should always be a small Alfa

 
アルファ・ロメオ・ミトが登場した時、私たち自動車メディアの多くはミトに優しくなかった。ミトはフィアット・プントとメカニカルコンポーネントを共有しているが、そのプントにさえ実力がおよばないとわかった時、ミトはスポーティで伝統を受け継いでいるモデルだという売り文句にはだれも耳を貸さなくなった。(AUTOCARも認めた)ミトの大きな長所は、コンセプトカーの8Cコンペティツィオーネのデザインの魅力を量産モデルとしてうまく反映していることだった。ミトのデザインは、その後誕生したすべてのアルファに影響を与えた。

 
それでも、まもなくミトがマーケットから姿を消し、後継モデルも登場しないことが残念でならない。というのも、クリスマス休暇中に1.4ℓデュアルクラッチATのミトで短距離ドライブをする機会があったからだ。ミトは記憶していたよりもいいクルマだった(エンジンはよく回り、ATの反応もクイックだった)。だが、ミトがマーケットを去ることを残念に思う気持ちが強まったのは、実際にはこの久しぶりのドライブが好印象だったからではない。アルファスッドの楽しさを覚えている者として、アルファのラインナップにはいつも小型モデルが存在すべきと思っているからだ。

それに、デビューから9年が経つにもかかわらず、今でも見栄えのするクルマでもあるし、はっきりとした個性があり他のモデルと見間違えることはない。低価格のモデルのなかで、こういうクルマは他には見当たらない。ミトがマーケットから姿を消した時、多数の有能なエンジニアたちの努力がいまひとつおよばず、ミトが成功しなかったことを私はあらためて残念に思うだろう。

 

 
取材を終えて編集部へ戻り、いろいろなクルマのキャラについて同僚たちと話した。そして、本当に特別なクルマになるためには、欠点が必要だという結論にたどり着いた。たとえば、ポルシェ911は私にはケイマンよりも面白いクルマだ。というのも、911の素晴らしいキャビンパッケージは、エンジンをまちがった場所に搭載していることによってもたらされた結果だからだ。非常に優れたエンジニアリングが、エンジンの搭載場所が原因で起きる不都合を帳消しにしている。他の会社にはなかなかこんなことはできないだろう。だからポルシェが大好きになる。レンジローバーは、ホイールの上に人を乗せている。だからボディの揺れは増幅されるが、それでも乗り心地は素晴らしい。なぜなら、サスペンションストロークがダンパーレートと完璧に適合しているからだ。そして、これがアンチロールシステムとうまく調和している。つまり、非常に優れたクルマ造りは、“まちがった場所” から始めるのがよいのだ。最終的にたどり着くべきところまで行けるのであれば。

translation:Kaoru Kojima(小島 薫)


AUTOCAR 英国版 編集長 スティーブ・クロプリー

オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。新しく独特なものなら何でも好きだが、特に最近はとてつもなくエコノミカルなクルマが好き。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
 
 
 

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