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2014.08.14

エレメンタルRP1

軽い車重に、ミド・エンジン、1トン当たりの出力は507ps。しかもこのクルマ、公道を走ることもできるし、来年のこの時期には実際に店頭にならぶ予定だ。最初の数行だけでも興味をそそるロードスター、名前はエレメンタルRP1だ。

ケータハム・セブンとロータス・エキシージのトラックと一般道でのアビリティを足して2で割ったクルマと説明すると分かりやすいだろう。なんと製作陣はわずか6人、彼らはF1マシンやマクラーレンP1を含むハイパフォーマンス・カー制作にも携わった経歴があるという名工中の名工だ。

デザインは皆が集合する前に粗方決めてしまっていたのだそうだ。それぞれのアイデアをおこしたCADファイルをクラウド上で吟味して、最終的に2つに絞り込んだという。なんとも現代的な話である。その2案のうちの1つが写真に写っている市販版となった。

名工たちは、かなりのエネルギーを制作に費やしているだけに、エアロダイナミクスから機械構造の精巧さに対してかなりのプライドを持っている。

”サウス・イースト・イングランドに住むオーナーならばル・マンまで無給油で行くことができます。それも旅路は快適、替えの衣類やテントを収めることのできるラゲージ・スペースもあるし、個別にロックを掛けることもできます” とテクニカル・ディレクターのジョン・べグリー氏。”早朝にフェリーから降りたすぐ後は寒い。しかしRP1は足元だけなら暖かく保ってくれます” と気の効いた冗談まで。ちなみに氏は、このクルマの制作にあたるまでは、メルセデスSLRマクラーレンや12C、P1の制作部門に身をおいていた凄腕だ。

サーキットまでも自走することができ、手軽な工具だけでセッティングも可能だという。”もちろんセッティングを行うかどうかはオーナーにも依るとは思いますが、いかにシンプルなクルマかを示すために我々はこのような仕組みにしたのです” とべグリー氏は続ける。

徹底的にシンプルであること。これがRP1のキー・ポイントなのだ。”手を加えることを前提としたクルマなのです” とオペレーション・チーフのイアン・ホール氏も。製造工程にも抜かりはなく、そのほとんどがひとつの工程のみで組み上げることができるのだそうだ。

信頼の置ける供給元からのみ仕入れたパーツは、ホール氏自身でも、数時間と簡単な工具、あとは六角棒スパナさえあれば組み立てることができるのだという。

既に2代目のプロトタイプも製作中だと言うのだから驚きだ。XP2と名付けられたそれは、つい先週に動力性能のテストが始まり、コンピューター上でもロード・ユースに関するシュミレーションが進行中。それぞれの構成要素には更なる軽量化が図られるなどの軽微なチューニングが来年の春までに完了の予定だ。

RP1の話に戻ろう。最も重要なパーツとも呼べる、中心部分のバスタブ構造は、当初はアルミニウムのみで構成される予定だったが、最終的にはカーボン・ファイバーとアルミニウムの両方を用いることになった。

タブ自体の重量は60kg、設計を行ったのは複合材料のエキスパートであるピーター・ケント氏だ。彼もまた、マクラーレンP1や12Cに始まり、F1マシンの設計にも従事したエンジニアの一人だ。

フロア部分とフロント・バルクヘッドはアルミニウムのサンドイッチ構造、固定されるサイド・ウォールと中心の骨格部分、ダッシュボード、メイン・タブの一部はカーボン・ファイバー製となる。

フロントのサブフレームにサスペンションとステアリングがマウントされる部分はすべてアルミニウム製。フォーミュラー・カーと同じく、前後のダブルウィッシュボーン式サスペンションは、ダンパー/スプリング・ユニットともに車体内部に搭載する、いわゆるインボード-マウントを採用。アイバッハのスプリングとナイトロンのダンパーが組み合わされる。

235/45タイヤが装着される17インチのアロイ・ホイールの向こう側には、カパロAPレーシングの4ポット・キャリパーと280mmのディスクが顔をのぞかせる。後方のサブフレームは、トランスミッションやサスのセット・アップを変更することなくパワー・トレインを入れ替える事ができるよう工夫がなされている。

RP1には今のところ3種類のエンジンを載せる予定。その中でもXP2にも乗せられる最も力強いエンジンをもつのが284psの2.0ℓフォード・エコブースト・ユニットだ。

同じフォード製でさらに軽量な183psの1.0ℓエコブーストも、経済的なバージョンとして採用。これに加えてホンダCBR1000RR用の13,000rpmまで回るエンジンも選択可能。こちらのエンジンは、サーキットでのアタックを主な使用用途とするカスタマーに向けられており、トータルの乾燥重量が500kgを切るため、同時にかなりのドライビング・テクニックも必要となる。

3種類のエンジンにはヒューランド製のシーケンシャル・ギアボックスが組み合わされ ”唯一これが文明の恩恵を授かっている” と、べグリー氏。

技術的にはまだまだ手が加えられていくとのことだけれど、デザインはほとんど写真のままで販売をするとのこと。”センター1本出しのマフラーなど、GTカーやオートバイからかなりのインスピレーションを受けています” フォードのデザイン部門出身のガイ・カルバン氏。

マクラーレン出身のエアロダイナミクス部門のマーク・ファウラー氏との密接なコミュニケーションが、このデザインを成功させる鍵となった。

たとえばフロント・ディフューザー。空気をボディ前部から流入させ、フロント・ホイールの後方へと導く仕掛けとなっているのだが、スタイリングの面でも優れているし、言うまでもなく技術面でも高い完成度を誇る。

一方かなりの部分がカーボン剥き出しになっているため、一目見た時には ”あれれ?” と思うかもしれないが、これもまたオーナーに好きなように塗装して欲しいというのがエレメンタルの願いなのだそうだ。

シートやペダルの位置はお互いに調整可能。かなり寝そべったドライビング・ポジションなのに加えて、足も地面と平行に投げ出す形になるが、調整幅の広さのおかげで身長150cmから2mのドライバーまで対応することができる。またF1マシンさながらの、アンダー・パネルの先端にはバンパーも取り付けられるので、ボディの保護にも役立つ。

リア・タイヤの前方には210ℓのラゲッジ・スペースを確保。ガソリンも満タンで55ℓまで入れることができると言うのだから、かなりの実用性だといえる。

マシンの調整も順調に進んでいるとのことで、ウェールズのファクトリーでの生産も目前なのだそうだ。来年の夏までには生産が開始し、1年間で約100−150台を予定。40人程度を追加で雇用し、世界的に販売することも視野に入れているとのこと。

気になる価格はまだ決定していないのだが、プロダクト・マネージャー兼財務担当のジェレミー・カーナー氏は ”あなたの希望よりかはいくぶん高いはずですが、さほど恐れるほどのものではありません” と含みを持たせる。もっともパワフルなケータハムが500万円後半から750万円くらいだということを参考にしながら、実際の発表を待つといいかもしれない。

先月のグッドウッド・フェスティバルでは、極力控え目に構え、実際の販売についても名言しなかったものの、今回の取材を通して、またひとつ小規模なスポーツカー・メーカーが名乗りをあげるのは、もはや時間の問題だと感じた。

エレメンタルRP1を制作するうえで最も大きな課題となったのは、なにもカーボン-アルミニウム・タブを作ることでも、3つの異なったエンジンを載せることでも、ユーザビリティを向上させることでもなく、そのモデル名をどうするか、だったのだそうだ。

”何千もの候補を挙げたのですが、どれもがどこかで聞いたことのある気がする名前ばかりだったのです” と再びジェレミー・カーナー氏。

何が良いのかを議論した挙句、結局はテクニカル・ディレクターが試作をコンピューター上で設計するときのフォルダにあてがっていた ”RP1” という、あくまで便宜的にしか使っていなかったコード・ネームを実際のモデル名にしたのだそうだ。

”先に申し上げたシンプルネスと、デザイン上の清浄さを巧く表現できているのでは無いでしょうか” と付け加えた。

モデルネームを用いたロゴは、元素周期表の最後を飾るかのように、ボディ後方にそっと掲げられている。

 
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