歴代高速ワゴンで最も際立つ アウディRS6 アバント・パフォーマンスへ試乗(2) お値段もスーパーカー級

公開 : 2024.02.02 19:06

RS6を究極的に増強したパフォーマンス V8ツインターボは630psと86.5kg-m獲得 舌を巻く貪欲的な速さ 乗り心地や操縦性も進化 英国編集部が評価

舌を巻く貪欲的な速さ 乗り心地や操縦性も進化

これまで、アウディRS6 アバントに積まれていたV8ツインターボ・エンジンは、アグレッシブな響きだったものの、聞き惚れるほどではなかった。BMW M5やメルセデスAMG E 63Sのように。

しかし、「パフォーマンス」は違う。パワーアップしただけでなく、音響的な強化も図られている。意欲的に回転する特性で、快音を引き出しやすくなってもいる。

アウディRS6 アバント・パフォーマンス(英国仕様)
アウディRS6 アバント・パフォーマンス(英国仕様)

排気音だけでなく、燃焼音を車内へ多く導くべく、防音材の一部を削ったそうだ。高回転域まで引っ張ると、リアルな重奏が充満する。同時に、人工的な印象は抑えられた。

乾燥した路面では、RS6 アバント・パフォーマンスの貪欲的な速さに舌を巻く。タイヤが温まった状態なら、驚愕の勢いでスタートダッシュ。後方へ荷重が移動し、フロントタイヤが悶える様子が伝わり、その後、猛烈な速度上昇が始まる。

実際のところ、過剰なほど。とはいえ、感動的だ。

8速ATの仕事ぶりも見事。加速時に若干ぎこちない仕草もあるが、シームレスにギアを切り替える。カーボンセラミック・ブレーキは低速域でギクシャクしがちながら、本域で走行中の制動力に、疑う余地はない。

乗り心地や操縦性は、目覚ましい進化を遂げている。ステアリングが正確なだけでなく、四輪駆動システムとシャシーバランスを融合させた、漸進的な動的能力を身に着けている。アクセルオン時の積極的な身のこなしにも、唸らされる。

例えるなら、日産GT-Rのステーションワゴン。シャシーには揺るぎない落ち着きがあり、確かな感触をドライバーへ伝える。RS4のように、鋭く速い。

アンダーステアは皆無 グリップ力も圧巻

M5やAMG E 63Sとは異なり、後輪駆動状態にはならない。一体感という点では及ばないかもしれないが、発売当初のC8型RS6には備わらなかった、エッジの効いた動的な個性が与えられている。

大きく速いアウディの弱点といえた、コーナーを攻め込んだ時に広がるアンダーステアは皆無。アクティブ・リアデフの効果で、侵入時からタイトにラインを保持し、出口に向けてニュートラルに加速していける。しかも、尋常ではない速度域で。

アウディRS6 アバント・パフォーマンス(英国仕様)
アウディRS6 アバント・パフォーマンス(英国仕様)

もちろん、真価を確かめるにはサーキットが必要。だが、一般道を速めに流すだけでも、この振る舞いは体感できる。ただし、存分に振り回して楽しめるわけではない。

後輪操舵システムの制御も素晴らしい。挙動を予想しやすい、自然な操舵を叶えたメーカーは非常に少ない。ステアリングホイールには適度な重みがあり、正確に回すだけで、コーナーの頂点目がけて大きなボディが旋回していく。

同時に、高速道路では安定性を高めてくれる。スタッドレスタイヤを履いていても、その効果は明らかだった。

サマータイヤでのグリップ力も圧巻。サーキットで連続するカーブを通過すると、車重を意識するものの、姿勢制御は一貫して安定している。息を呑む速度でのコーナリングを叶えているが、ボディサイズを強く意識することはなかった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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