歴代最強の634ps/86.5kg-m アルピナB5 GTへ試乗 G30型のラストを飾る250台

公開 : 2023.07.21 08:25

アルピナによる、最後のG30型5シリーズとなるB5 GT。一層引き上げられた能力を、英国編集部がサーキットで確かめました。

250台限定 最後のG30型アルピナ

2026年までに、アルピナはBMW傘下の高性能ブランドとして再編される。メルセデス・ベンツとAMGの関係のように。それまでは、年間2000台に届かない生産数が大きく増えることはないだろう。その後どうなるのかは、我々には知らされていない。

ドイツ・ブーフローで培われてきたブランドイメージを活用し、Mモデルやロールス・ロイスとは異なるモデル展開をBMWが進める可能性は高い。特に、上質なインテリアを中心に。だが、メカニズムへ独自のアップデートが施されるのかは、定かではない。

アルピナB5 GT(欧州仕様)
アルピナB5 GT(欧州仕様)

今回ご紹介するB5 GTは、従来のアルピナ・レシピに則って作られる1台。他に例のないオールラウンダーだといえる。しかも、生産数は250台と非常に少ない。

ベース車両は、G30型5シリーズのM550i。既に次世代の5シリーズが発表されていることは、AUTOCARの読者ならご存知かもしれない。アルピナが擁する約100名の技術者によって、一層の高性能化が図られたG30型最後の特別なモデルだ。

過去にはB10と呼ばれてきたB5は、歴史的にアルピナのフラッグシップ・モデルを務めてきた。ブランドのアプローチを、最も端的に体現したモデルとして。圧倒的に速く、日常的に乗りやすく、控えめな見た目で仕立てられてきた。

最新のB5も同様。直線ではスーパーカー顔負けの加速を見せつける。しかし、乗り心地はリムジンのように上質。BMW M5 CSのように鋭い回頭性は披露せずとも、秀でた姿勢制御とステアリングの精度、懐の深さで、運転を堪能できる。

同社史上最強の634ps 最大トルクは86.5kg-m

このB5 GTは、アルピナの見事な技術力が証明されているだけでなく、BMWをベースに独自モデルを60年間も生み出し続けてきた、同社の歴史を自ら讃えるモデルでもある。英国価格は、約12万5000ポンド(約2187万円)。ちなみに、既に完売している。

1台1台丁寧に作られるB5 GTにはサルーンもあるが、ツーリングと呼ばれるステーションワゴンの方が多いそうだ。納車は2023年の後半から。オプションのフルラヴァリナ・レザー内装を指定した場合、手間がかかるため2024年末まで待つことになる。

アルピナB5 GT(欧州仕様)
アルピナB5 GT(欧州仕様)

基本的なシャシーやパワートレインは、既に販売が終了している、従来のB5と大きくは違わない。しかし、吸気系統とECUなどに手が加えられ、4.4L V型8気筒ツインターボ・ガソリンエンジンの最高出力は620psから634psへ増強されている。

その結果、B5 GTはアルピナ史上最強モデルという座を掴んだ。カタログ上の最高速度は330km/hがうたわれているが、非公式ながら、実際は354km/hまで出るらしい。

最も注目すべきは最大トルク。3500rpmから、86.5kg-mという凄まじい腕力を繰り出す。M5 CSより13%も高く、アストン マーティンDBS770 アルティメットに迫る。

今回の試乗場所は、国際的なグランプリも開催できるオランダ・ザントフォールト・サーキットだったが、収まりきれないほどの動力性能を発揮してみせた。特に中回転域でのたくましさは半端ない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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