「孤高の地位」を築いた高速ワゴン! アウディRS6 アバントGTへ試乗 魔法のような快適性

公開 : 2024.10.11 19:05

純粋にエンジンで走る高速ワゴンのグランドフィナーレ 派手なグラフィックと専用ボディキットで差別化 V8ターボは630psで不変 専用サスで魔法のような乗り心地 英編集部が評価

派手なグラフィックに専用ボディキット

少しクラシックなアルミホイールに、レッドとブラックの派手なグラフィック。英国価格は17万6975ポンド(約3398万円)。モデル末期のRS6 アバントとしては、派手すぎて高すぎるように思えるが、計画した660台は完売済みだから在庫の心配は杞憂だ。

冷静に考えれば、賢明なチョイスとはいいにくい。しかし、純粋に内燃エンジンで走るRS6のグランドフィナーレを記念した特別仕様へ、強く惹かれる気持ちも理解できる。

アウディRS6 アバントGT(英国仕様)
アウディRS6 アバントGT(英国仕様)

目を引くグラフィックは、1989年のアメリカIMSA選手権を走った、アウディ90 クワトロGTOを彷彿とさせる。アルミホイールは、1990年代末のS6が履いていたデザインへ似ている。サイズは21インチと巨大で、深くえぐれているけれど。

RS6 アバントGTは、ステッカーとホイールでドレスアップしただけのモデルではない。新設計のフロントスプリッターが与えられ、フロントグリルはブラックに塗られ、ワイド感を強調。ボンネットとフェンダーパネルは、カーボンファイバー製になる。

そのホイールアーチ後方には、巨大なエアアウトレット。テールゲート上のスポイラーも巨大。レーシングカーさながらの、勇ましい雰囲気を醸し出している。

ドイツ南西部、ネッカーズルムのA6用生産ラインでベースを作り終えると、そこから遠くないボリンガー・ホーフの工場へ輸送。R8やeトロン GTと並んで、7名の従業員によって完成されるという。

V8ターボは630psで不変 魔法のような乗り心地

パワートレインは、RS6 アバント・パフォーマンスと基本的に同じ。4.0L V8ガソリンツインターボが、630psを繰り出す。トランスミッションは8速オートマティックで、もちろん四輪駆動だ。スポーツ・ディファレンシャルは、専用チューニングになる。

GT最大の違いといえるのは、サスペンション。通常のモデルにはエアスプリングが組まれるが、調整式ダンパーとコイルスプリングのセットへ置換。3段階から減衰力を選べるが、それにはボディをジャッキアップして、タイヤを外す必要がある。

アウディRS6 アバントGT(英国仕様)
アウディRS6 アバントGT(英国仕様)

アンチロールバーも強化されている。前は30%、後ろは80%も硬いという。

かくして、シリアスなサーキット御用達ステーションワゴンに生まれ変わったのでは、と想像するかもしれないが、実際は違う。21インチの極薄タイヤと、アダプティブではないダンパーが支える車重2075kgのアウディは、魔法のように乗り心地がイイ。

試乗車は、恐らくダンパーがソフト側に設定されていたのだろう。それでも、エアスプリングのよそよそしさは排除され、路面の荒々しさも伝えない。高速道路ではロードノイズがやや大きいものの、穏やかなA6と同等といえる上質さが漂う。

カーボンファイバー製シェルのバケットシートは、背中が痛くなりそうな見た目だが、メルセデスAMGBMW Mモデルの同等アイテムより座り心地はベター。感心せずにはいられない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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