後輪駆動から四輪駆動へ進化 ポルシェ911 ターボ 930から993まで 4世代を比較(2)

公開 : 2024.04.14 17:46

価格高騰が止まらない、空冷ターボのポルシェ911 1989年まで進化を重ねた、930型の発表から50年 空冷最後となった四輪駆動の993型 英国編集部が魅力を再確認

959から964型911のターボ化へ軌道修正

今回の930型ポルシェ911 ターボ3.3は、オーナーによって272psから20psほど増強されており、前期の911 ターボ3.0より明確にたくましい。ブレーキペダルはソリッドで、しっかり噛みつき制動力が比例して高まる。

5速MTのシフトレバーは、正確にスロットへ導ける。前期の4速から1段増えたことで、適切なレシオを選びやすく、増えた車重を巧みに補える。

ポルシェ911 ターボ3.3(930型/1978〜1989年/海外仕様)
ポルシェ911 ターボ3.3(930型/1978〜1989年/海外仕様)

グレートブリテン島南部のビスターヘリテージ・サーキットで、低速コーナーを攻め込む。3.3Lエンジンが30mm後方へ寄ったことによる、バランス変化を感取することは難しいが、アクセルペダルでのリカバリーは容易だ。

反面、コーナリング途中で、ブーストが予想以上に高まる可能性も増している。挙動は従来以上に鋭敏。急激なアクセルオフや必要以上の荷重移動で、コースアウトへ陥るのも難しくないだろう。

1980年代のポルシェを支えた930型の911 ターボだったが、同社の年間生産数は、好調期の約4万台から約1万5000万台へ減少。早期の回復が求められていた。

1986年には、グループBのホモロゲーションを狙った四輪駆動の959をリリースするが、そのカテゴリー自体が消滅。930型の911 ターボを置き換えるモデルとしての計画も、頓挫してしまう。

そこで、過去最大の進化を遂げていた、964型911のターボ化へ軌道修正される。基本的なフォルムは先代と重なるものの、不自然に伸ばされていたバンパーはボディと一体化。サスペンションは、トーションバーからコイルスプリングへ一新されていた。

コイルサスが生むダイレクトで安定した操縦性

時代に合わせ、パワーステアリングを指定可能に。トランスミッションには、ティプトロニックと呼ばれるオートマティックも用意された。ブレーキにはABSが実装され、四輪駆動も選べた。

964型911にターボが登場したのは、1991年。3.3L水平対向6気筒に1基のターボが組まれ、後輪駆動に5速MTというパッケージングでスタートし、1993年に3.6Lへ拡大。最高出力は、320psから360psへ上昇した。

ポルシェ911 ターボ3.6(964型/1991〜1993年/海外仕様)
ポルシェ911 ターボ3.6(964型/1991〜1993年/海外仕様)

今回の964型は、その後期型。オーストラリアから英国へ持ち込まれた右ハンドル車で、オーナーはレーシングドライバーとしての経験を持つ、アンブロージオ・ペルフェッティ氏だ。

18インチのスピードライン社製アルミホイールと、レッドのブレーキキャリパーが、3.6L仕様の証。車重は930時代から大幅に増えているが、パワーアシストが備わり、ステアリングホイールを握った印象は4台で1番軽い。

それでも、911 ターボ3.6を不安なく扱える。新しいコイルスプリング・サスペンションは、コーナー入り口のブレーキングでも、頂点を過ぎたアクセルオンでも、ダイレクトで安定した操縦性を叶えている。

オリジナルの性能を遥かに越えた、真新しいミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2を履き、安定感は揺るぎない。躍動的だが親しみやすく、テールスライドで遊ぶこともできた。

タイトコーナーで3速から加速。ブーストの昇圧に合わせて、テールが悶える。一般道を迅速に駆け巡ることを目的に、後輪駆動の911 ターボを選ぶなら、筆者はこの964型にするだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ベン・バリー

    Ben Barry

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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