後輪駆動から四輪駆動へ進化 ポルシェ911 ターボ 930から993まで 4世代を比較(2)

公開 : 2024.04.14 17:46

空冷最後で四輪駆動になった993型ターボ

964型の911 ターボ3.6は、痛快なパンチを繰り出す。直線だけでなくカーブでもエンターテインメント性は高く、洗練性や扱いやすさも共存している。

オーナーのペルフェッティは、ル・マンへの長距離旅行などに、これを愛用しているとか。近年のハードコアな911と比べて、外界との隔離性は高く、筆者もその考えに賛同できる。

ポルシェ911 ターボ(993型/1995〜1998年/海外仕様)
ポルシェ911 ターボ(993型/1995〜1998年/海外仕様)

そして空冷最後の911となったのが、993型。熟成度を増し、豪華さを増したポルシェではあるが、ターボは明らかに964型からの進化の延長上にある。スーパーカーの959で培った技術を、巧みに導入していたとしても。

モダンさを増したスタイリングは、特にフロント周りで空力特性を改善。911らしいボディの内側には、四輪駆動システムが潜んでいる。フラット6は2基のターボチャージャーで過給され、全幅は1795mmに。ボディ剛性は20%も向上した。

993型では、ベーシックな911 カレラでも930型のターボ以上の最高出力を発揮。911 ターボでは407psへ上昇し、1996年のターボSでは、450psまで増強された。

今回の993型911 ターボは、ニール・クリフォード氏がオーナー。落ち着いたグリーンのボディだが、リアフェンダーはエアインテークの空いた「S」仕様。オプションだった、430ps仕様のX50エンジンが載っている。

最高出力は964型から大幅に増しているが、ピーキーな印象はまったくない。パワーバンドも高回転側にあるものの、むしろ柔軟で粘り強い。ターボラグはほぼなく、アクセルペダルを傾けた途端に速い。

リアエンジン・レイアウトの限界を拡張

ブースト圧が高まると、景色が早送りで流れ出す。2024年でも、強烈な体験を生み出す。パワーステアリングは964型と同じく、手のひらへ充分な感触を伝える。シフトレバーとクラッチペダルのタッチは、4台のベストだ。

993型の911では、軽量で安定したリアアクスルが、敏捷な操縦性に変革をもたらした。より扱いやすく、ライン調整やリカバリーもしやすい。リアエンジン・レイアウトの限界を広げたといっていい。

ポルシェ911 ターボ(993型/1995〜1998年/海外仕様)
ポルシェ911 ターボ(993型/1995〜1998年/海外仕様)

四輪駆動のターボは、それをベースに能力を拡張している。増大したパワーをしっかり受け止め、ストレートだけでなく、コーナリング時にも活用できる。

基本的に、リアエンジンらしい物理的な特性は残っている。しかし、四輪駆動化によって体験は違う。プッシング・アンダーステアが僅かに表れたら、右足を少し緩め、軽いフロントノーズの向きを整えればいい。

オーバーステアへ転じたら、アクセルペダルの加減でスライド量を調整できる。カウンターステアを当てつつ、必要な推進力が展開される。むしろ筆者にとっては、後輪駆動の初期の911より扱いやすい。

ツインターボに四輪駆動というパッケージングで、964型までのようなモータースポーツとの結びつきは絶たれたかもしれない。後輪駆動のターボは、レーシングカー直系のGT2のみの設定となった。

それでも、サーキットで強さを証明してきた、空冷の水平対向6気筒は積まれている。993型911 ターボは、旧時代と新時代をつなぐ、架け橋のようなモデルだったのかもしれない。

協力:スポーツパーパス社、ビスターヘリテージ

記事に関わった人々

  • 執筆

    ベン・バリー

    Ben Barry

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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