ポルシェ911 詳細データテスト 良好な乗り心地 使い切れる適度なパフォーマンス 絶望的な遮音性

公開 : 2024.02.10 20:25

かつてパリ-ダカールを制した953へのオマージュが、新種の911であるダカール。カレラ4GTSにオフロードを意識した足回りを組んだら、フレンドリーな運転特性に仕上がりました。乗り心地も、音環境を除けば上々です。

はじめに

ポルシェ911ダカールに、多くの説明はいらない。ヴァイザッハのエンジニアが、996世代のスーパーカップ・レースカーをロードゴーイングカーに仕立て直したGT3以来、もっとも意義深い市販911のルールブックの再解釈だ。25年近く前に登場したGT3は、結果として911のモータースポーツ由来のDNAを象徴するモデルとなった。

では、今回のテスト車はと言うと、それ以上に着想の源が明らかだ。1984年、1万2000kmの悪路を走破し、ポルシェにパリ-ダカールの勝利をもたらした、大幅な改造を受けたGシリーズの911である。燃料タンク容量は270L、マニュアル操作のロッキングセンターデフを備え、ホイールのトラベルは300mm近い。ただし、エンジンはロードカーとたいして変わらない3.2Lフラット6。953として知られるモデルである。

テスト車:ポルシェ911ダカール
テスト車:ポルシェ911ダカール    JACK HARRISON

その後、これにつづいたのが959パリ-ダカール。見るものすべてにサプライズを与えた、もっとも困難な悪路レースを勝ち抜き、953以上に有名なモデルとなったクルマだ。これらへのオマージュである911ダカールは、2500台の限定生産となる予定だ。

少なくとも911というクルマの性格を考えれば、このオフローダー仕立てはきわめて特殊だとも、これまでにないほど自由な発想の特別仕様車だとも言える。最新のGT3RSは、サーキット向け市販911の能力がどこまで行けるのかを再定義し、S/TはRSの厳密さを緩めて公道向けに仕立てたモデル。スポーツクラシックは、MTで後輪を駆動するターボにすぎない。

その点、ダカールは、パッと見でも下回りの保護パーツやカイエンのような地上高、オールテレインタイヤなど、911らしからぬ装備で悪路走破性を高めている。かつてパリダカに挑んだ、特別生産の911たちのように。

では、現代のライバルと比べた場合にはどうか。ロードカーとして、このクラスの上位に食い込む、あるいはトップを脅かすことができるのだろうか。

記事に関わった人々

  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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