トヨタ・プリウス

公開 : 2016.01.18 23:30  更新 : 2021.10.11 08:58

乗り心地は、サスペンションが全般にソフトなこともあって、角の取れた不快感のないものだといえる。しかも、舗装の継ぎ目を越える際のショック、なかでも特に後輪からのそれが先代より明らかに軽く感じられたのは、独立懸架リア・サスペンションの恩恵だろう。先代よりねじり剛性が60%向上したというボディも、乗り心地に貢献しているはずだ。

動力性能に関しては、先代より向上したというインフォメーションは特にされていないが、エンジンとモーターの連携をこれまで以上にスムーズにするなどの取り組みがおこなわれたという。結果、交差点からのスタートも追い越し加速も軽快な印象で、必要にして充分なパフォーマンスを備えていると実感できた。

Aに続いて乗ったのは、装備の簡素なSの「ツーリング・セレクション」だった。それは前記のとおり、タイヤが215/45R17にサイズアップされたモデルで、当然ホイールも2インチ・アップされるから、ルックスがぐっとスポーティになるのもポイントのひとつだ。

しかも「ツーリング・セレクション」は、17インチの45扁平タイヤに合わせてサスペンションにも手が入れられ、スプリング、ダンパーとも標準型より10%ほど強化されているという。10%というのは微妙な数字だが、市街地でも乗り心地が硬くなった印象を与えないという点で、好ましい選択だろうと思った。

だがそれでいて、タイヤの扁平率とサイズの違いもあって、ハンドリングは標準型よりも締まった印象があり、ステアフィールも一段と繊細に感じられた。結果として、スロットルのオンオフでノーズの向きを変えるという、これまでのプリウスではあまり意識することのなかったコーナリングの醍醐味を、愉しむ気にさせるクルマになったと思う。

通常の油圧制御に回生によるモーター制御が加わるブレーキは、ハイブリッド車の泣き所のひとつだといえる。新型は精度の高いセンサーによって油圧と回生のバランスを最適に制御したとされるが、僕の右足が感じた印象は完ぺきとは言えなかった。ここから明確にブレーキが効き始めるというポイントに、まだ若干のムラが感じられたのだ。ガソリン車と同等の自然なペダルフィールの実現を、もう一歩、望んでおきたいところだ。

記事に関わった人々

  • 吉田 匠

    Takumi Yoshida

    1947年生まれ。1971年、青学大卒業と同時に「CAR GRAPHIC」編集部に。スポーツカーの試乗記などを手掛け、FJ1600などのレースにも参戦、優勝経験数回。1985年、同社を退社、フリーランスのモータージャーナリストになる。「ポルシェ911全仕事」等、単行本多数。旧いスポーツカーに目がなく、愛車はポルシェ356B、ロータス・エランS2、他。

関連テーマ

おすすめ記事

 
最新試乗記

トヨタ プリウスの人気画像