「EVにソーラーパネル」は現実的か 太陽光発電をクルマに活用する方法

公開 : 2023.05.08 18:25

ソーラーパネルで発電したエネルギーでクルマを走らせるというのは、現実的なアイデアなのか。EVなど電動車に搭載するとどのようなメリットがあるのか、また現在の開発状況を簡単に紹介します。

ソーラーパネルを載せるメリット 開発状況は

EV(電気自動車)が必要とするエネルギー量と、市販のソーラーパネルの発電量を比較すると、太陽光でEVを走らせるのは非現実的であるとすぐに気付くだろう。

それでも、このアイデアは古くから試みられており、1955年のゼネラルモーターズの「サンモービル(Sunmobile)」までさかのぼることができる。しかし、いくら魅力的なアイデアとはいえ、一般的なEVの外装の面積から発生する数百ワット程度の電力では、短距離を走ることすらままならない。

アプトのソーラーパネルを搭載したフォルクスワーゲンID.Buzz
アプトのソーラーパネルを搭載したフォルクスワーゲンID.Buzz    アプト

だが、EVにソーラーパネルを設置することは、2つの理由から検討する価値があると思う。1つは、クルマは駆動系以外のエネルギー使用量が多く、1kWの発電が可能なシステムであれば、エアコンや暖房の消耗を相殺できるということ。

2つ目は、太陽が出ている間は発電が止まることはないため、数ワットでも電力を蓄積できるということ。晴れた日には、1kWのシステムで、ドライバーがオフィスで働いている間に約48kmの航続距離を稼ぐことができる。

ドイツのチューニング会社であるアプトは、フォルクスワーゲンID.Buzz向けのシステムを開発した。ミニバンの長いルーフは、太陽の光を吸収するのに適した場所だ。アプトのシステムは0.6kWを発電し、年間およそ3000km分の航続距離をまかなえると見込まれている。屋外レジャーで使うことを想定すれば、アクセサリーの駆動に役立つ量といえるだろう。車体側面用のサイドパネルも開発中で、最大1kWの出力が期待される。

ソーラーパネルとEVの融合は、いまや本格的な取り組みになっている。トヨタの新型プリウスPHEVにはソーラールーフのオプションがあり、年間で最大1250km分の電力を得られるという。オランダのライトイヤー社は、最近の経営難を乗り越え、手頃な価格のソーラーEVを生産しようとしている。

また、ドイツのソノ・モーターズ社は、資金不足のため自社のソーラーEV「サイオン(Sion)」の発売には至らなかったが、他社のEV用ソーラーパネルの開発を専門に手掛けている。3月には、「世界10大自動車メーカーの1つ」と契約を交わしたという。

ソノ・モーターズ社は、特に都市生活者にとって魅力的な技術であるとし、路上駐車や公共充電施設を使えない人々の不安を解消することができると考えている。

同社は、乗用車からトラックやバスに至るまで、あらゆる車両にソーラーシステムを搭載する。40トンの大型貨物車の冷凍トレーラーに132平方メートルのパネルを取り付けると、冷却システムの年間エネルギー消費の50%をまかなえるそうだ。

また、太陽電池をポリマーに組み込む独自の技術を開発し、自動車の外装に使用できるとしている(サイオンのプロトタイプにも見られる)。

ソーラーパネルを自動車に搭載するには、コストの大きさや費用対効果の低さがネックになるが、世界的に太陽光発電が普及しつつあることで、価格が下がり、また技術の向上によって発電量も上がっている。

バッテリー技術が飛躍的に向上していることを考えると、そう遠くない未来、ソーラーパネルを搭載した自動車が普及することは想像に難くない。注目の分野だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェシ・クロス

    Jesse Crosse

    英国編集部テクニカル・ディレクター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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