試乗 シトロエンC3エアクロス 新小型SUVの走り/内装/サイズを評価

公開 : 2019.09.10 06:20  更新 : 2022.02.24 19:48

16インチと17インチ

装着タイヤによる印象の違いは興味深い点。標準は16インチ、シャインのパッケージOPのみ17インチ仕様になる。

一般的にロープロタイヤ/大径ホイール車のほうが切れ味鋭く、細かな振動が目立つが、C3エアクロスは17インチ車のほうが穏やかである。

シトロエンC3エアクロスSUVシャイン・パッケージ
シトロエンC3エアクロスSUVシャイン・パッケージ

理由は簡単である。16インチ車にはオンロードタイヤ(BSトランザ)、17インチ車にはM+Sタイヤ(HKキナジー)を履くため。

パッチ路では16インチ車のほうが細かな突き上げが目立ち、ハンドリングでは初期応答が鋭く、うねり路面での収束感や安定感に勝る。

一方、17インチ車は路面当たりが穏やかで操縦感覚もマイルド。パターンやトレッドコンパウンドによる踏面剛性の違いが影響していると思われる。

ただ、操縦性と乗り心地全般では優劣というより、最後の一味をどう捉えるかの好みの差とも言える。このタイヤ設定は雪路/ダート路対応を加えても基本的なシャシー性能や乗り味に大きな影響が出ないように配慮した結果と考えるべきだろう。

グリップコントロールとは

なお、シャイン・パッケージOP車には路面状況により駆動力配分をコントロールするグリップコントロールが装備されている。これはデフの差動機構を利用した電子制御のブレーキLSD機構であり、ノーマル、スノー、マッド、サンド、オフの5モードが設定されている。

本格クロカンや泥濘/深雪は難しいが、多少荒れた林道くらいなら対応できる踏破性を確保している。

シャイン・パッケージにはグリップコントロールが搭載される
シャイン・パッケージにはグリップコントロールが搭載される

パワートレインは1.2Lの3気筒ターボ。ミッションはトルコン/遊星ギアの6速AT。手堅い構成である。

トルコンATは低速での扱いが容易。多くの上級プレミアムカーが採用していることから分かるように、滑らかな変速で走りの質感向上にも役立つ。さらに動き出しのコントロールが難しくなる雪路や柔らかなダート路での扱いでも有利である。

直3ターボ+6AT

エンジンはダウンサイジングターボらしい地力が感じられる。

巡航回転数を2000rpm以下に抑えるのはセオリーどおりだが、トルク任せに回転を抑える印象はない。負荷が安定しない状況では早めにダウンシフトあるいはアップシフトを遅らせるように制御され、加速に移行した時の繋がりや伸びやかな加速感の演出が巧み。

シトロエンC3エアクロスSUVシャイン・パッケージ
シトロエンC3エアクロスSUVシャイン・パッケージ

速いというよりもストレスを感じさせないドライバビリティが好ましい。

3気筒にしては振動はもちろん排気パルス感も少ない。4気筒に比べると回転数が低く感じられることもあり、エンジンフィールや静粛性でもストレスが少ない。高級とかプレミアムという類ではなく、人当たりのいい快適性をもたらしている。

初見の試乗なのにすぐに馴染んでしまう。馴染みがいいから強く印象に残る部分もないのだが、走りに関わるすべてがケレン味なくまとまっている。ハンドリング以外も「いい感じに“ふつう”」なのが好印象。余暇も含めた生活を長く共にする要点が分かったクルマである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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