BTCCチームの裏側 ホンダ・シビックとロータス・エラン、最速芝刈り機

公開 : 2019.09.16 16:30

チーム・ダイナミクス・モータースポーツ社は、英国を拠点に置くレーシングチーム。英国で人気のBTCC(英国ツーリングカー選手権)でホンダ・シビックを参戦させていますが、それ以上の面白さを詰め込んだ場所です。ドライバーのマット・ニールに内部を紹介してもらいました。

ホンダの世界最速の芝刈り機

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

3度の英国ツーリングカー選手権での優勝を成し遂げたマット・ニール。彼のレースキャリアの殆どは、家族経営といえるチーム・ダイナミクス・モータースポーツ社が開発したマシンで築いてきた。だが、同じガレージから生み出された最速の芝刈り機、ミーン・マウアV2をドライブできなかったことが心残りだという。

192psを発生させる、ホンダ製スーパーバイク用のエンジンを搭載した芝刈り機の最高速度は240km/h以上で、世界最速の芝刈り機としてギネスブックにも登録されている。このスーパー芝刈り機は155cm程度の身長のドライバー用に設計されており、180cmを超えるニールは乗ることができないのだ。

チーム・ダイナミクス・モータースポーツ
チーム・ダイナミクス・モータースポーツ

ニールはこのスーパー芝刈り機の存在自体が、チームの技術能力やメーカーとの連携関係の強さを示すものだとして、誇りに思っているという。1993年にニールの父、マット・スティーブによって設立されたチーム・ダイナミクスは、BTCCで数十年に渡って築き上げてきた経験を元に、幅広い分野で技術力を活かしている。

それを示すものが、バーミンガムの南西、ドロウィッチに構える2万4100平方メートルを超える広大な敷地を持ったワークショップ。敷地には戦前の名残を消すために、かなりの手が加えられている。ワークショップの中心には、黒とオレンジ色に塗り分けられた、ハルフォード・ユアサ・レーシング・ホンダ・シビック・タイプRのレーシングマシンが鎮座する。2004年から、チーム・ダイナミクスはBTCCのホンダ・チームを運営しており、2010年からはホンダUKのファクトリーとしても機能している。

レーシングマシンは完全に自社開発で、スウィンドウにあるホンダの生産工場から送られるFK8のボディシェルを用いている。モノコックシャシーは酸洗処理され、マウンティングポイントから接着剤や構造材を除去。その後補強され、新しいリアエンドを取り付けられ、ロールケージが組み込まれる。ボディシェルが塗装されるまでに1000時間もの作業工程があるそうだ。

BTCCだけでなくヒストリックカーも

ワークショップではホンダから送られてくるCADデータを元にスペアパーツなどを製造。時間とコストを削減するために、3Dプリンターによるパーツの利用も増えてきているという。BTCCレースカーには2名の専属メカニックが1台毎に割り振られ、レースが終わるたびに分解され、点検と洗浄が行われ、組み直される。

チームマネージャーのジェームス・ロジャースによれば、この作業には毎回約2週間を要し、年間で20週ほどは必要となるが、残りの32週間は別のプロジェクトを担当するとのこと。ホンダUKからの期待も高く、「主な作業は常にBTCC」ということだが、チームはほかの自動車メーカーからも「クール」なプロジェクトを引き受けているという。

チーム・ダイナミクス・モータースポーツ
チーム・ダイナミクス・モータースポーツ

チーム・ダイナミクス・モータースポーツ社は、マット・ニールの双子の子供のために、ミニ・チャレンジ用のクルマも走らせていたことがあった。今は息子のひとりは旧スペックのBTCCスペックのシビック・タイプRを、もうひとりが新しいBTCCとアウディS3 TCRをドライブしている。また耐久レースのイベントにも参加している。

S3 TCRはヨーロッパでの広い経験を得るのに有用だという。「BTCCはTCRのルールとは準拠しませんが、クルマを知ることは良いことです」 とロジャースは話す。またチームは最新のツーリングカー以外にも活動の幅を広げている。特に近年はヒストリックカー・レースの参戦を大切にしており、ロータス・コルティナやロータス・エランのマシン制作と参戦も進めている。

「ヒストリックカー世代には大きなマーケットが存在すると聞いてはいましたが、今まで実感は持てませんでした。ある時グッドウッド・リバイバルに招待され、ゲートをくぐった時にその規模が理解できたのです。まったく異なる世界でした。BTCCのレースパドックは競争が激しい場所で、作り笑顔も不可欠です。しかしグッドウッド・リバイバルではみんなが微笑んでいて、挨拶をして助けてくれます。なぜ自分がモータースポーツを好きになったのか、思い出させてくれた場所でした」 と振り返るニール。

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