【300万円超えの価値】試乗 S660モデューロXバージョンZ サーキットで納得、ホンダスポーツのDNA

公開 : 2021.03.27 18:15  更新 : 2022.01.07 01:56

生産終了が発表された「ホンダS660」。その最後を飾るモデューロXバージョンZを、サーキットで走らせました。標準モデルと比較してみましょう。

最後の特別仕様 どんなクルマ?

text:Shigeo Kawashima(川島茂夫)

軽乗用規格の本格マイクロスポーツカーとして2015年に誕生したS660が、2022年3月をもって生産終了が決定。

ホンダの純正用品メーカーであるホンダアクセスの手でカスタマイズしたコンプリートカーのS660モデューロXも、ベースモデルと共に生産終了となり、その最後の特別仕様となるのが「モデューロXバージョンZ」である。

S660モデューロXバージョンZ
S660モデューロXバージョンZ    前田恵介

モデューロXは、「S660 α」をベースに空力を磨き込んだフロントマスクやリアウイングなどのエクステリア、ホイール弾性も含めてチューンされたサス(5段階減衰力調整ダンパー付き)、シートと加飾にアルカンターラ素材を用いたボルドーレッド/ブラックの2トーン内装などの専用装備を装着。

加えてブレーキディスクもドリルドディスク/スポーツパッドに換装。スポーツカーとしての性能と質の向上を図った特別仕立ての1台といった内容だ。

バージョンZの空力パーツおよびサス周りはモデューロXと共通だが、同仕様専用装備としてカーボン調加飾パネルや2トーンドアライニング、着脱式シートセンターバッグ、ブラッククローム調エンブレムなどの専用装備を採用。精悍さとプレミアム感を向上。

純粋に性能を求めるだけならモデューロXと同じでも、最終仕様に向けて細かなところに手を入れて仕上げたような印象を受けた。

どんな感じ?

発売後の試乗会だが、試乗は袖ヶ浦フォレストレースウェイ。なぜ、公道試乗でないか理由は単純である。

公道では試せないような限界域や高速域でのモデューロXの性能を知るためだ。

比較試乗したホンダS660 α
比較試乗したホンダS660 α    前田恵介

といっても、オリジナルに対して何処がどのくらい変わったかは同条件下での乗り比べも必要。そこでこの試乗では、標準車(S660 α)、それに外装およびサス周りの純正用品装着車が比較用に用意されていた。

まずは3仕様に共通する点は基本操縦特性。一言でまとめれば徹底した弱アンダー(ステア)だ。

MRレイアウトでは前輪を軸に後輪を振り出すようなオーバー(ステア)に陥ると重心が後方にあるため回復性が大幅に低下する。高速コーナーでそんな状況に陥れば致命傷である。

良識あるMR車は高速コーナリングで弱アンダー傾向を維持する特性とする。S660の基本特性も同様だ。

ただし、アンダー傾向はコーナー半径が小さくなるほど強くなる。高速コーナーで弱アンダーなら低速コーナーでは強アンダーになってしまう。ところがS660は低速コーナーでも弱アンダー。

サス設計とアジャイルハンドリングアシストの絶妙の効果で、コーナー半径や横Gの違いによる操縦特性の変化が至って少ない。

これは純正用品フルスペック仕様も、バージョンZにもそのまま継承される。異なるのは挙動の抑えやコントロール性のよさ。「操る」質の向上である。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    前田惠介

    Keisuke Maeda

    1962年生まれ。はじめて買ったクルマは、ジムニーSJ30F。自動車メーカーのカタログを撮影する会社に5年間勤務。スタジオ撮影のノウハウを会得後独立。自動車関連の撮影のほか、現在、湘南で地元密着型の写真館を営業中。今の愛車はスズキ・ジムニー(JB23)
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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