【300万円超えの価値】試乗 S660モデューロXバージョンZ サーキットで納得、ホンダスポーツのDNA

公開 : 2021.03.27 18:15  更新 : 2021.10.11 13:49

標準車との違い

“どこでも弱アンダー”は同じでも、車体周りの動きが違う。

標準車の高速コーナリングではピッチやロールの抑えが甘く、微妙に揺らぐ、あるいは煽られるような挙動が残る。

S660モデューロXバージョンZ
S660モデューロXバージョンZ    前田恵介

それに応じてスリップアングルも微妙に変化。量的には僅かでありアンダー/オーバーはプラマイ・ゼロなので「悪さ」とまでは言わないが、あまり心地のいいものでもないので、呼応して微妙な舵角修正を入れる。

けっこう面倒、なおかつちょっとスリリングでもある。

これが純正用品フルスペック仕様になると随分と収まる。揺らぎを抑えるような修正舵は不要となる。

速度を乗せて飛び込み定常円限界で、クリップを舐めるようにコーナーのアウト側に孕んでいくような高速コーナーでの安心感とラインコントロール性は段違いである。

バージョンZはさらに収束性とコントロールの精度、高速コーナーでの限界が向上する。

バージョンZ 空力に注目

しかも神経質な反応は皆無。随意でコントロールできる領域が拡大。例えば限界コーナリングでコース幅を使い切るような走り方も容易になる。と記せばいい事尽くめのようだが、そのとおりなのだ。

試乗時のダンパーセッティングはFr.5/Rr.5。

S660モデューロXバージョンZ
S660モデューロXバージョンZ    前田恵介

これは純正用品のダンパーセッティングとほぼ等しいので、高速コーナリングでの安定とコントロール性は空力の賜である。

ちなみにバージョンZは、マスク周りおよびエアダム下面処理によるフロントダウンフォースの強化に伴い、リアウイングにガーニーフラップを追加。空力バランスは純正用品と同等でも効果はランクアップしている。

しかも、70km/hくらいでも体感できるほどの効果を発揮。スペックのためではなく実践力アップの設計だ。

「買い」か?

車載Gメーターに記される大凡の全開加速度は3速で0.3G、4速なら0.2~0.1G程度。定常円旋回の横G、全制動の減速Gは1G。

動力性能に対してシャシー性能が圧倒的に上回っている。高出力車と同じコーナリングラインを取ると立ち上がりがスカスカ。動力性能は軽乗用だが、シャシー性能は本格スポーツカー、それがS660モデューロX(バージョンZ)である。

S660モデューロXバージョンZ
S660モデューロXバージョンZ    前田恵介

S660の基本操縦特性はNSXに似ている。登場年月からすればNSXが似ているということになるが、タイトターンから高速コーナリングまで振れ幅が少なくコントローラブルな弱アンダーで収める。

標準車なら格の違いを意識させられるが、モデューロXではNSXの原点がS660にあった、と思えるくらい振る舞いが洗練されている。フットワークだけならマイクロNSXと称してもいいくらいだ。

標準車のαに対してモデューロXは約72万円高、バージョンZはその約11万円高。

300万円を超える価格は軽乗用としては破格かもしれないが、良質な本格スポーツカーのハンドリングを気軽に楽しめる。

ホンダが考える操安性をはっきりと示したモデルと言ってもよく、NSXの7分の1弱の価格でホンダスポーツの神髄を味わえると思えば極めてコスパに優れたスポーツカーなのだ。

記事に関わった人々

  • 前田惠介

    Keisuke Maeda

    1962年生まれ。はじめて買ったクルマは、ジムニーSJ30F。自動車メーカーのカタログを撮影する会社に5年間勤務。スタジオ撮影のノウハウを会得後独立。自動車関連の撮影のほか、現在、湘南で地元密着型の写真館を営業中。今の愛車はスズキ・ジムニー(JB23)
  • 川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。

関連テーマ

人気テーマ

おすすめ記事

 

ホンダの人気画像