時代先取りだったHVの2+2クーペ ホンダ CR-Z 英国版中古車ガイド シャシー性能は◎

公開 : 2022.08.24 08:25

時代を先取りしていたといえる、ハイブリッド・スポーツクーペのCR-Z。その魅力を英国編集部が振り返ります。

ハイブリッドの2+2クーペ

窓から道路を眺めれば、体格のいいクロスオーバーや実用主義のミニバンばかり。スタイリングの良いクラシカルなサルーンでも、実はハイブリッドだったりする。最近のクルマは退屈だと、お嘆きの読者もいらっしゃるかもしれない。

トヨタプリウスが世界へ浸透しようとしていた頃、ハイブリッド・サルーンの別の選択肢になっていたのがホンダインサイトだった。まだマイナーだったハイブリッドの魅力を多くの人に知ってもらうべく、ホンダは小さな2+2クーペのCR-Zを発売した。

ホンダCR-Z(2010〜2017年/英国仕様)
ホンダCR-Z(2010〜2017年/英国仕様)

ベースとなったのは、2009年に登場した2代目インサイトのプラットフォーム。そこへ、1980年代から1990年代にドライバーの心を掴んだ、FFスポーツのCR-Xへ似たスタイリングのボディが載せられていた。

とはいえ、CR-Zは俊足のスポーツクーペというわけではなかった。フロントに搭載されていたのは1.5Lの自然吸気エンジンで、当初は控えめな113psを発揮。そこに14psの駆動用モーターが組み合わされ、システム総合での最高出力は123psだった。

ハイブリッド化のメリットといえたのが、発進加速。17.6kg-mの最大トルクは、モーターのアシストにより1500rpmを過ぎた辺りから湧き出た。0-100km/h加速は、スポーツ・モードでも9.1秒ではあったけれど。

優れたシャシーでスポーティな回頭性

ホンダらしく、シャシー性能は磨かれていた。ステアリングのフィーリングやレスポンスは良好。ドライビングポジションは低く、6速MTも選択が可能だった。スポーツカーらしい雰囲気に浸ることは充分にできた。

回頭性に優れ、姿勢制御も良くボディロールは最小限。カーブの続く道でのオンザレールの感覚は、楽しいのひとこと。気張って運転しても20.0km/L前後だった燃費も、オーナーを喜ばせた。CR-Xと比べれば、相当に優秀なエネルギー効率といえた。

ホンダCR-Z(2010〜2017年/英国仕様)
ホンダCR-Z(2010〜2017年/英国仕様)

メータパネルには、エコドライブ・バーというインジケーターが付いている。駆動用バッテリーが電気を供給しているか、充電されているかを確かめられる。

もちろんスポーツカーを純粋に突き詰めるなら、ハイブリッドの重荷を降ろし、よりパワフルなVTECエンジンを載せた方がベターだったことは間違いない。しかしホンダが目指していたのは、そんな考えとは少し異なっていた。

電動化技術で何が可能なのか、ひと足先に提示していたのだった。CR-Zのパッケージングは、現代にも通用するといっていい。2022年にどこかのメーカーがコンパクト・クーペを発売するとして、CR-Zと似た内容だったとしても違和感はないだろう。

実際、信頼性に優れたハイブリッド・クーペを探すなら、CR-Zは今でも充分な訴求力を備えている。英国の中古車市場では、3500ポンド(約58万円)前後から発見できるのもうれしい。改めてその魅力に触れてみるのも悪くないと思う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ピアソン

    Mark Pearson

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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