トップシークレット・スーパーGT-Rはなぜ落札されなかったのか 背景に2つの理由

公開 : 2022.01.25 17:45

トップシークレット・スーパーGT-RがBHオークション×東京オートサロンに出展されましたが流札。理由を考察します。

トップシークレットとは?

本題に入る前にトップシークレットについて説明しよう。

ゼロヨン(0-400m加速のタイム)、最高速、ドリフト、サーキットなど様々なカテゴリーに挑戦し、中でも最高速を常に追求するチューナーがトップシークレットだ。

トップシークレット・スーパーGT-R
トップシークレット・スーパーGT-R    BHオークション

1991年にトラストから独立した永田和彦氏がトップシークレットを設立。1994年からは0-400km/hや0-300km/h加速、最高速チャレンジなどのスピードトライアルに挑む。

なかでもアウトバーン(ドイツ)にV35 GT-Rを持ち込み341km/h、ナルド(イタリア)では358km/h、そしてイギリスではJZA80スープラで340km/hを記録したことは、その世界で伝説となっている。

以来スーパー耐久レースへの参戦や、国内のみならずアメリカやイギリスでのD1グランプリへ出撃するなど、世界におけるJDM文化の牽引役としても知られている。

スーパーGT-R、どんなクルマ?

BHオークションによる「東京オートサロン2022コレクションカー・オークション」に主品されたのがトップシークレット・スーパーGT-Rである。

2011年日産GT-Rブラック・エディションをベースに、そのまま街を走れ「大人なコンプリートカー「として仕立て上げられたもので、スタート価格は1412万円とされた。

トップシークレット・スーパーGT-R。メカニカル面ではブーストアップと最新データのCPUにより600ps近いパワーを獲得。
トップシークレット・スーパーGT-R。メカニカル面ではブーストアップと最新データのCPUにより600ps近いパワーを獲得。    BHオークション

ワイドなフロントフェンダーを始め、バンパー、エンジンフード、カーボン製サイドステップ、効率を追求したリアウイングなどの外装はトップシークレット製で武装する。

何よりのポイントは、Tスペック限定色の「ミレニアムジェイド」にペイントされたこと。その起源は日産スカイラインGT-R(R34)のV-スペックIIニュルで採用された伝説の大人カラーだ。

メカニカル面ではブーストアップと最新データのCPUにより600ps近いパワーを獲得。

このほか、足回りに手が加えられ「走り」と「普段使い」を両立した仕様とされている。

なぜ落札されなかったのか?

オークションがスタートした1月19日の夜10時の段階でトップシークレット・スーパーGT-Rのウォッチリストは52を集め、同時に出品されたトムス・スープラ(46)、ブリッツ・スープラ(35)を上回っていた。

この流れはオークション終了時でもトップシークレット(304)、トムス(232)、ブリッツ(202)と、トップシークレットが最後まで注目を集める状況に変わりはなかった。

価格の高さとステイタス性の高い輸入スーパースポーツが理由で、トップシークレット・スーパーGT-Rは流札になったと筆者は考える。
価格の高さとステイタス性の高い輸入スーパースポーツが理由で、トップシークレット・スーパーGT-Rは流札になったと筆者は考える。    BHオークション

それではなぜ落札されなかったのか?

筆者が考えるに価格の高さが足を引っ張ったと思われる。ちなみにノーマルの2010年モデルなら800〜900万円で手に入れることができる。

同社の在庫車両を見ると東京オートサロン出展車で徹底的に手が加えられた2011年GT-R SNエディションは、15万kmと多走行だが1100万円で販売中。

軽くモディファイされた委託車の2010年モデルは880万円であることを考えると理由が見えてこよう。

もう1つの要因が輸入スーパースポーツの存在だ。近年は東京オートサロンにもこの種のモディファイ車が台頭し、あらたなカテゴリーを確立しつつあることが感じられる。

そのためチューニングカーを好む富裕層が、高額なチューンド日本車ではなくステイタス性の高い輸入スーパースポーツへ流れていると思われる。

こうした背景からトップシークレットのGT-Rに憧れる層がイメージする価格より高かったことから、落札に至らなかったと筆者は考える。

しかしオークションは水物。

ちょっとしたきっかけで化けることがあるので、今回は「何か」が足りなかったのかもしれない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。

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