驚きと喜びをもたらす490ps ジェネシスGV60 スポーツプラスへ試乗 韓国最速EV 後編

公開 : 2023.05.08 08:26

ヒョンデの上級ブランド、ジェネシスによる電動クロスオーバーのGV60。ご当地のワインディングで、実力を評価しました。

運転体験への期待をリセットする必要性

オリンピックが開催される前の韓国ピョンチャンは、どんな様子だったのだろう。競技施設が点在し、いまも華やかなフラッグがはためいている。スキーのジャンプ台がそびえる方向から、救急車がサイレンを鳴らして走り去っていく。雪は殆ど残っていない。

幹線道路をそれて、いよいよ登り坂へ差し掛かる。前方に急カーブが存在することを示す、警告標識が路肩に立っている。国は違えど、伝えようとしている内容はわかる。待っていたのはコレだと、ジワジワ興奮してくる。

韓国ピョンチャンのワインディングへ挑むジェネシスGV60 スポーツプラス
韓国ピョンチャンのワインディングへ挑むジェネシスGV60 スポーツプラス

上質なシートへ深く座り、エネルギー効率のことは忘れることにする。ひたすら、ジェネシスGV60 スポーツプラスを堪能しようじゃないか。

右足へ力を込める。ウワーッと思わず声が溢れる。435psと71.2kg-mという数字から期待する通りの勢いに、飲み込まれる。その鋭さとは裏腹に、発せられるサウンドは静か。スピード感を伴わない。

とはいえ、0-100km/h加速を4.0秒でこなす動力性能が生む、加速Gに自然と集中力が高まる。アクセルペダルの角度へ、正確に2基の駆動用モーターが反応する。内燃エンジンで育ってきた筆者には、理解し難い新鮮な感覚でもある。

バッテリーEV(BEV)が、従来のクルマと比較して良いか悪いか、という議論はあるだろう。少なくとも、ドライビング体験へ期待する内容を、1度リセットする必要があることは確かだと思う。

圧倒的なパワーとスピードの抗し難い魅力

カーブが迫り減速。ステアリングホイールを切り込み、再び加速。GV60は、優れた内燃エンジン車と変わらない様相でワインディングをこなしていく。驚くほど手懐けやすい。

タイトコーナーではアンダーステアが僅かに現れる場面もあるが、極めて限定的。ステアリングホイールは軽く回せ、手を焼くようなトルクステアは殆どない。シャシーの能力は極めて高い。このルートでは、筆者のスキルでは限界まで迫ることが難しい。

ジェネシスGV60 スポーツプラス(韓国仕様)
ジェネシスGV60 スポーツプラス(韓国仕様)

安全を担保しつつだが、目一杯飛ばしても、GV60はラインを捉え続ける。ジェットコースターのように。お腹や首の筋肉が、徐々に痛くなっていく。

同時に穏やかでもある。ドライバーは、ステアリングホイールと2枚のペダルを操ればいい。感嘆するほど速いが、自在に振り回せるような感覚まではない。楽しさより、速さが勝っている。

だとしても、望ましい道を望ましいクルマで走れば、自ずと笑顔が湧いてくる。GV60は、筆者にそれを再確認させてくれた。

内燃エンジンで走る理想的なモデルを堪能してきたドライバーからは、恐らく小言が出るだろう。それでも圧倒的なパワーとスピード、その引き出しやすさには、抗し難い魅力がある。

ステアリングホイール上のブーストボタンで、抑えられていた490psを解き放てば、一段上の猛烈な加速体験にも興じれる。正しい状況でボタンを押せば、より一層GV60へ気持ちが惹き込まれることだろう。

ただし、奔放にブーストは使わない方が良い。駆動用バッテリーは、想像以上に早くエネルギーを放出してしまう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジム・ホルダー

    Jim Holder

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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