注目車種をイッキ見 自動車の祭典グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード2023 総まとめ

公開 : 2023.07.19 19:05  更新 : 2023.07.19 19:35

世界中からクルマ好きが集まるビッグイベント「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」は近年でも記憶に残る、忘れがたい開催となりました。現地レポートと注目の新型車を総まとめでお届けします。

最大級のクルマの祭典 忘れがたい4日間

7月13日(木)~16日(日)にかけて英国で開催された第30回グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードは、ロードカーとコンペティションカーの多彩な組み合わせ、数々の大型発表、そして現地の天候が印象的だった。

イベントの全容と展示された最新車両についての全レポートをここにまとめる。

毎年夏になると、世界中のクルマ好きが一堂に会する英国最大級のイベントが開かれる。
毎年夏になると、世界中のクルマ好きが一堂に会する英国最大級のイベントが開かれる。

グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード

退屈なクルマはもうない。

ありふれたものであれ、奇抜なものであれ、挑戦的なスタイルであれ、高価なものであれ、騒々しいものであれ、重いものであれ、型破りなものであれ、すべての新車は誰かにとっての大きな関心事である。もちろん、より多くの人に興味を持たれるものもあるが、天候に左右されたグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード2023でわかったことは、すべてのクルマが祝福に値する、少なくとも会話には値するということだ。

旧車、新型車、改造車、コンセプトカーなど多種多様なクルマが展示され、その一部は実走行を披露する。
旧車、新型車、改造車、コンセプトカーなど多種多様なクルマが展示され、その一部は実走行を披露する。

毎年フェスティバルのハイライトであり、AUTOCARチームにとって最も忙しい時間帯でもある「ヒルクライム」が始まった。挑戦車の一団がグッドウッドの丘に登場すると、そのバラエティの豊かさは明らかであり、興味と議論を誘わないクルマは1台もなかった。

観客は明らかに、絶叫するV10エンジン搭載のマクラーレンのサーキットカー、ソーラスに魅了された。ソーラスは16日日曜日のタイムド・シュートアウトで、ロードカーやレースカーの多様なコレクションの頂点に立ち、自慢の権利を主張する。

また、漫画のようなブガッティ・ボライドを無視することは不可能で、ド迫力のW16エンジンが音を立てながらあっという間に丘を駆け上がっていった。しかし、同じ観客が、キアの7人乗り新型SUV「EV9」、イネオスの燃料電池プロトタイプ「グレナディア」、フォードのEVクロスオーバー「エクスプローラー」、MGの高性能ハッチバック「MG4 XPower」などを興味深げに眺め、感嘆の声を上げていた。それらはいずれも、タイヤのきしみとモーターのかすかなうなりだけを聞かせていった。

「EVがグッドウッドに殴りこみをかけた」のは今年が初めてではない。ここ数年、EVはグッドウッドでよく見かけるようになった。今年のヒルクライムは静かなものだったが、内燃エンジンを搭載した挑戦車と数や知名度が拮抗しており、その存在に対する恨み言が減ったことは確かだ。

今年のフェスティバルは、バラエティに富み、賞賛に値する実験的なものだった。メーカーが新しいパワートレイン技術や車両セグメントを積極的に採用し、新車市場が多様化するのは歓迎すべきことだ。

もちろん、熱烈な伝統主義者もいつまでも残るだろう。グッドウッドが誇るクラシックカー、レースカー、ラリーカーの比類なき組み合わせは、燃え尽きることのないエンジンと、濾過されることのないエグゾーストノートが持つ生の感覚的な魅力に代わるものはないと考えるエンスージアストたちにとって憩いの場となり続けている。

ポルシェは75周年の誕生日パーティーの開催地にグッドウッドを選び、ドイツ・シュトゥットガルトから輸送したル・マン伝説のマシン、砂丘を駆け抜けるダカール・カー、流線型のミッドセンチュリースポーツカーが、耳をつんざくような熱狂的なフェスティバルのハイライトとなった。ヴィンテージレーサー、超高級スーパーカー、F1スター、グループBのヒーローたちが、フェスティバルの間中、あらゆる世代のファンに限りないエンターテインメントを提供し続けていることは言うまでもない。

一方、フェスティバル・オブ・スピードの第30回大会が、まったく別の理由で記憶に残るものになりそうな瞬間があった。

13日木曜日の午後、観客が固唾をのんで見守っていたのは、疾走するクラシック・ジャガーの脱輪に巻き込まれた2人の観客の安否がわかるまでの15分間だった。

幸いなことに、この日の早朝に丹念に並べられた(そして驚くほど吸収力のある)干し草の俵は、簡単には破られないことが証明された。このアクシデントでの重傷者はいなかった。

しかし、リッチモンド公爵(フェスティバル創設者)の毎年恒例のガーデン・パーティーは、アクシデントにこそ見舞われなかったものの、英国の夏の天候に水を差された。気象庁が15日土曜日に気象警報を発令していたため、主催者は数千人の観客、臨時のグランドスタンド、数百万ポンドのクラシック・ポルシェで飾られた高さ30mの彫刻、そして時速80kmの風を組み合わせるのは賢明ではないと判断した。土曜日のチケット購入者が落胆するのは当然だが(特に日曜日の分はすでに完売していたため)、皮肉屋や辛辣な人々の活躍の場となりがちなソーシャルメディア上では、同情と忍耐のムードが漂っていた。

「がっかりしているが、難しい決断だったこととその理由は十分に理解している。今日の6時間のドライブは危険だった」「これはグッドウッド・チームにとって悲痛な決断だっただろうが、みんなのために特別にやったことだ」と、投稿者たちはフェスティバル主催者の情熱(と思いやり)に敬意を表している。ゲートを閉めるというのは難しい決断だったが、間違いなく正しい決断だった。

予定外の休演日を除けば、今回のフェスティバル・オブ・スピードはこれまでで最も強力な大会の1つであり、長く記憶されることになるだろう。この30年間、グッドウッドがクルマのあらゆる栄光を讃え続けてきたことに、世界中の自動車ファンは感謝している。

文:フェリックス・ペイジ(英国編集部)

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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