メルセデス AMG GT

公開 : 2015.05.09 12:59

パワートレイン


エンジンは、M178と呼ばれるAMGユニットが搭載される。このエンジンは、ゼロから開発されたもので、ダイレクト・インジェクションの4.0ℓV8ツイン・ターボだ。

砂型鋳造されたクローズド・デッキのアルミニウム・クランクケースに鍛造アルミニウム製ピストンを組み合わせることにより、乾燥重量209kgと軽量なパワー・ユニットだ。また、シリンダー・ウォールにスチール・カーボン材を溶射コーティングするナノスライド摩擦低減加工を施すことで、フリクション・ロスを低減するとともにエンジンの軽量化に貢献している。シリンダー・バンクの挟角にツイン・ターボチャージャーが取り付けられるという “ホット・インサイドV” というユニークなレイアウトを持つ。この構成は、エンジン自体をコンパクトにまとめるだけでなく、鋭いレスポンスを生み出し、しかもエミッション的にも有利になるとAMGはコメントしている。

オイル・ルブリケーションはドライ・サンプ。エンジン搭載位置は、メルセデスがフロント・ミド・ポジションと呼んでいる、フロント・アクスル後方に搭載される。ドライ・サンプを採用したことで、エンジンはSLS AMGよりも55mmほど低くすることが可能となり、更に強い横Gが発生する高速コーナリング時でも安定したオイル供給が可能になったという。

パワーとトルクの値は、スタンダード・モデルのGTでは462ps/6000rpm、61.1kg-m/1600-5000rpm、GT Sでは510ps/6250rpm、66.3kg-m/1750-4750rpmとなる。この数値は、SLS AMGの571ps/6800rpm、66.3kg-m/4750rpm、そしてSLS AMGのハイ・パフォーマンス・モデルのブラックシリーズの631ps/7400rpm、64.8kg-m/5500rpmと比較するとややパワー・ダウンしていることになる。しかし、パフォーマンスは、GTが0-100km/h加速が4.0秒、最高速度が304km/h、GT Sが0-100km/h加速が3.8秒、最高速度が310km/hと必要にして充分すぎる値を確保している。また燃費はGT SがJC08モードで9.6km/ℓ、CO2排出量は219g/kmとアナウンスされている。

なお、GT Sにはダイナミック・エンジン・トランスミッション・マウントがオプション設定されている。これは、エンジン・マウントとトランスミッション・マウントそれぞれに磁性体入の液体可変マウントを搭載。各種センサーからの情報によりドライビングの状況を検知して、マウントの硬さを自動で調整するというものだ。通常走行時は柔らかいマウントによってドライブトレインからのノイズと振動を効果的に遮断し快適性を高め、ダイナミックなドライビング時にはマウントを硬くすることでドライブトレインのロール・モーションを減少しクイックなコーナリングを実現する仕組みだ。

トランスミッションは、デュアルクラッチの7速スピードシフトDCT。ギアボックスはGTでは4つ、GT Sでは5つのモードが与えられる。コンフォート、スポーツ、スポーツ・プラス、インディビデュアルがGTに、そしてGT Sにはこれにレース・モードが加わる。このモード切り替えは、トランスミッションのギア・シフト・プログラムに加え、エグゾース・トシステムを含むエンジン特性、サスペンション、ステアリング特性、3ステージESP、セーリング機能とECOスタート・ストップ機能、リトラクタブル・リア・スポイラーの作動プログラムが連動して変化する。なお、トランスミッションは、トランス・アクスルにレイアウトされるため、リア・アクスル前方に置かれる。これにより、フロント47、リア53という理想的な前後の重量配分を可能としている。

また、リミテッド・スリップ・デフは両モデルに標準装備だが、GTがメカニカルなのに対し、GT Sは加速を自動的に判断し、可変ロッキング機構を持つエレクトロニック・ファンクション・モデルが装備される。

シャシー

フレームは専用のアルミニウム製スペース・フレームが採用されている。軽量、低重心、高強度という3つを最適化するためのチョイスだ。スペースフレームの90%以上にアルミニウムを採用したほか、フロント・モジュールはアルミニウムよりもさらに軽いマグネシウム製を採用。回頭性を向上し高いアジリティをもたらす。また、テールゲートにはアルミニウムよりも軽量な高強度スチールが採用されている。

サスペンションは、ダブル・ウィッシュボーン。ホイール支持とサスペンション機能を分離し、スプリング・ストラットとダンパー・ストラットを下側のラテラル・リンクで支え上下動を最小限に抑えつつ正確なハンドリングを実現している。また、ウィッシュボーンとステアリング・ナックル、前後ハブ・キャリアを鍛造アルミニウム製とすることで、ばね下重量を軽減している。

さらに、GT Sには、電子制御ダンピング・システムを搭載したAMGライド・コントロール・スポーツ・サスペンションが装備される。これは、コンフォート、スポーツ、スポーツ・プラスという3つのサスペンションモードを選ぶ可能なもの。

ステアリングはエレクトロ・メカニカル・タイプで、速度と縦方向の加減速を感知するタイプ。AMGパラメーター・ステアリングというネーミングがされている。これは、舵角に応じてギア比を変化させることにより、ロック・トゥ・ロックの回転数を減少。駐車時や市街地など、ステアリングを大きく操作する場合の操作量を減らしながら、高速走行時には優れた直進安定性を実現するという。さらに車速だけではなく、AMGダイナミック・セレクトのドライブ・モードによってもパワーアシスト量が変化する。スポーティなドライビング時にはアシスト量が減り、正確なステアリング・フィールと路面からのダイレクトなフィードバックが得られるという。また、3ステージのスタビリティ・コントロール(3ステージESP)が標準装備される。これは、高レベルな安全性を確保する標準モードのESPオン、システム介入前に一定のドリフト・アングルを許容するスポーティなセッティングのESPスポーツ・ハンドリング、サーキット走行などダイナミックなドライビングのためのESPオフの3つのモードを選択可能だ。このスタビリティ・こんとろーるは、SLS AMGよりも限界時においてニュートラルなフィーリングをもたらすものだという。

タイヤ、ホイールは、標準ではGTがフロント255/35R19、リアが295/35R19、GT Sがフロント265/35R19、リア295/30R20というサイズ。ブレーキは、GTではφ360のドリルド・ベンチレーテッド・コンポジット。ディスク、GT Sにはパフォーマンスの向上に対応してフロントにより大径のφ390のディスクが装備される。また、GT Sではオプションとしてフロントφ402、リアφ360のAMGカーボン・セラミック・ブレーキを選択(1,028,500円)することも可能だ。

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