【実車でカートコース爆走】 どんなコースも全開がF1ドライバーの性 アルピーヌイベントレポ

公開 : 2024.04.05 07:05

カートコースを実車で…

まずは練習走行から、タイトなコースをオコンはまるでジムカーナのように、ロックとフル加速を駆使しながら攻め始めた。

オフィシャルのSNS動画のカメラマンを助手席に乗せて数ラップした後、いよいよアタック。そのうちESTEBAN OCON TOKYO A110Rとでも検索すれば、公式の車載目線の動画も観られるだろう。

F1鈴鹿を前にアルピーヌ・ジャポン主催イベントがお台場で開催
F1鈴鹿を前にアルピーヌ・ジャポン主催イベントがお台場で開催    花村 英典

それにしても、先ほどより1段上がったペースで攻めているのに、スキール音をほとんど鳴らさず、狭いコース幅でウォールに対しては握りこぶし二つ分ぐらいのマージンを残しながら、A110Rチュリニが躍動する。

当初はアルピーヌ・ジャポンのスタッフでさえ無理筋と考えていたが、計測タイムが表示されて誰もが驚いた。この日の第1部、プレス対抗レースで係員として動いてくれた金本きれい選手が持つコースレコード、30秒452に約コンマ3秒にまで迫る30秒768を、オコンとA110Rチュリニは打ち立ててしまったのだ。

いくら真剣に走ることがウケるとはいえ、EVカートのサーキットで素晴らしく大人げない本気ぶり。A110RのRは「ラディカル」のRという売り文句も思い出した。このボケ/ツッコミなのか分からない過激さというか、トラウマになりそうな可笑しさが、フランス人っぽいユーモアでもある。

思えば、タイトなつづら折りを攻め倒すのは、まさにチュリニ峠辺りでのA11Oの伝統芸で、コーナーがタイトで条件が厳しいほどに力を発揮するのが、アルピーヌ本来の姿であることを、オコン超一流の遊びゴコロとプロフェッショナリズムは示してくれた。願わくば、数年後に登場するであろうA110のEV版でも、再びお台場でデモランを実現して見せて欲しいものだ。

鈴鹿でのF1本番というかレースはこれからだが、もう2024年は「オコンがお台場ですんごいデモランをやった年」として記憶されるだろう。

毎度、際どい企画を、車のポテンシャルとマンパワーで超越してしまって想像以上のオチがつくという顛末も、アルピーヌの伝統だ。ルーティンからハミ出たところでこそ伝説が生まれるとは、こういうことなのだ!

記事に関わった人々

  • 執筆

    南陽一浩

    Kazuhiro Nanyo

    1971年生まれ。慶応義塾大学文学部卒業。ネコ・パブリッシングを経てフリーに。2001年渡仏。ランス・シャンパーニュ・アルデンヌ大学で修士号取得。2005年パリに移る。おもに自動車やファッション/旅や食/美術関連で日仏独の雑誌に寄稿。2台のルノー5と505、エグザンティア等を乗り継ぎ、2014年に帰国。愛車はC5世代のA6。AJAJ会員。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

関連テーマ

おすすめ記事

 

アルピーヌ A110の人気画像