第54回 湘南ヒストリックカークラブ 大磯ミーティング

2015.11.29

text & photo:Kunio Okada (岡田邦雄)

 
SHCC(湘南ヒストリックカークラブ)は、古くからの歴史を持つ自動車愛好家のクラブだ。最初は相模川の河川敷にあったカート場でのジムカーナから始まり、リバーサイド・レーシングチームと名乗っていたのは35年ほど昔のこと。

それから富士サーキット・カート場を経て、1993年に大磯プリンスホテルの広大な駐車場に舞台を移した。54回目というのは富士サーキット以来のカウントだ。また自動車メーカーなどが試乗会の場所として利用するようになったのも、そもそもSHCCが大磯ロングビーチを活用して、新しい使用方法の可能性を生み出したことが契機となっている。

東海道の宿場町であった大磯は、横浜と箱根の中間にあり、明治以降の政治家や作家などが別邸を構え、たとえば昭和の初め頃にはランチア・ラムダを乗り回していた白洲次郎夫妻のような国際感覚を備えた人たちが住み、戦後もロールスロイスを公用車としていた吉田茂のような英国贔屓の政治家が終の住処とした。

1957年になると日本初となる海沿いの巨大プールである大磯ロングビーチが開業し、続いて1964年には大磯プリンスホテルが開業して、おりからのモータリゼーションの発展と相まって、スポーツカーがその大きな要素のひとつであるような’60年代の若者文化のメッカのひとつとなった。

そんなハイカラな文化を許容してきた歴史のためだろうか、SHCCのイベントは、この風土とともに多くの人々を惹きつけている。参加者は、日本の東西から年に2回開催されるジムカーナを楽しみにして(生きがいにして!)自走して、あるいはトレーラーを引いて、やってくる。

皆、腕に覚えのある人たちばかりだが、運転だけでなく、クルマの整備とチューンナップについても達者である。しかも通人の余裕のあるお遊びとはいえ熱い情熱があり、それゆえに走る時には真剣なので見学者にも緊張感が伝わって、モータースポーツの醍醐味が感じられるのだ。

次回の開催は来年の6月5日(日曜日)。一度でもここに足を運ぶと、病みつきになってしまうかもしれない。

  • ロータス51はRクラス。しかし、このジムカーナに命をかけてチューンしたケーターハム7には、もっと早いタイムを記録する連中がいた。

  • かつてホイールでも名を馳せた関西のコンストラクターであるハヤシ・レーシングのF-J、ハヤシ712はスズキ・フロンテの3気筒エンジンを搭載。

  • フィアット124アバルトラリー から、アバルトによるラリーでの活躍が始まった。今回もアバルトの名に相応しい好タイムを記録した。

  • 英国ではフロッグ・アイ 、日本ではカニ目の愛称で呼ばれるオースチン・ヒーレー・スプライト Mk-1の珍しいファストバックのハードトップ付。

  • スズキ・フロンテ・クーペはSHCCのジムカーナでいつも大活躍。今回も倍以上の排気量を持つライバルたちを見事に打ち破った。

  • SHCC顧問の太田朗大人氏は、かつてマカオGPに出場した歴史的人物。そんな氏が所有する戦前のMG TBに付くバッジは新しいもので1964年!。

  • 日本最年少のオースチン7のオーナーくん(まだ大学院生!)が、ジムカーナ初挑戦となる妹のために、自らエンジンの調整を行っていた。

  • ワークスカーの雰囲気のトヨタS800、DOHCエンジンを秘めたホンダT360、そしてホンダS600クーペ。’60年代の青春を彷彿とさせるクルマたちだ。

  • ルノ−4CVのノックダウン生産から始まった日野自動車が初めて独自に製作したコンテッサ900レーシング、お隣はブルーバードP311。

  • 当時のFL500は、日本のレーシングカーのコンストラクターたちの黎明期で、エバ、レーシング・クオータリー、ベルコ、などが育っていった。

  • プライベーターの堀雄登吉が製作したオトキチ・スペシャルが好成績を挙げて、生産化されたFLがアロー号だった。これはそのシリーズのS31。

  • 今回のジムカーナに、FL500マシンはアローS31の他にも、青色のハヤシ712と、銀色のマキシムA-02Aが集まり、軽快な排気音を響かせた。

  • かつてのグループCカーのイメージを再現して製作されたマシン。パワーユニットは、スバルの水平対向エンジンを搭載している。

  • 今回の大磯ミーティングに参加した車両の中でいちばん台数が多かったのがミニだった。ジムカーナでは侮れないパフォーマンスを発揮する。

  • 永遠のスポーツカーである7は、主にケーターハム製の7が数多く出場していた。SHCC参加車のなかでも最も速いタイムを叩き出す。

  • ポルシェも356や911の各モデルに加えて914も姿を見せた。ガルフ・カラーが決まっている。

  • 上品な色合いのボディカラーが魅力的な356Aカブリオレ。ドライバーもジェントルマンだった。

  • ロータス47GTは、エランとは違う雰囲気を醸し出している。もっと鋭いナイフのようなイメージがある。

  • 最後にはかつて「黒い稲妻」と呼ばれた国内外で活躍したレーサーの桑島正美さんが、フェアレディZ432Rで華麗な走行を魅せてくれた。

  • マニアックなショップも多数出店。こちらは英国物にも仏蘭西物にも強いオフィス403。モールトン自転車やグローブトロッターのトランクまで扱う。

  • 青山の自動車専門古書店「ロンバルディア」も出店し、様々な書籍を持ち込んだ。その山から掘り出し物を見つけて喜んでいる人もみられた。

  • この大磯ミーティングにはフィアット500で毎回大阪から自走で参加する常連がいる。しかも走り終わると再び自走で大阪まで帰る強者である。

  • SHCC大磯ミーティングには、見学者もマニアックなクルマで来るので、駐車場のチェックも欠かせない。奇麗なベータ・モンテカルロも居た。

  • 戦い終わって、日が暮れて…。SHCCの参加者は真の愛好家だけに、自分で競技車両を運び、自分自身でメンテナンスしている人も多いようだ。

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