【3つの原因】NASCARやインディ なぜアメリカでモータースポーツが地盤沈下しているのか

公開 : 2020.01.01 11:50  更新 : 2021.10.09 23:55

モータースポーツ好きのはずのアメリカ人が……

そんな独自色が強いNASCARだが、近年はアメリカ本国でも人気低下に歯止めがかからない状況だ。NASCAR中継を見ても明らかなように、観客席で空席が目立つレースが増えている。

理由は、いくつかある。

空席が目立つレースが増えている理由の第一は、ブームの反動。第二は、レース自体の荒々しさが少なくなってきたこと。
空席が目立つレースが増えている理由の第一は、ブームの反動。第二は、レース自体の荒々しさが少なくなってきたこと。

第一は、ブームの反動だ。

NASCARは80年代まで、アメリカ人にとってもマイナーな存在だった。それが、エンタメ性を強調したテレビ中継が奏功し、90年代中盤に人気が急上昇。レース場の運営企業は集客増を狙って観客スタンドの増設を進めた。

収容人数2~3万人程度から5万人、10万人と規模の拡大が続いた。また、90年代後半から2000年代にかけて、全米各地に新設の大型オーバルコース建設ラッシュとなった。

こうした拡張路線が行き過ぎてしまい、観客数が減少することで、空席が目立ち、それを目にする観客やテレビ視聴者がNASCAR人気低下を実感してしまうという悪循環に陥った。

第二は、レース自体の荒々しさが少なくなってきたことだ。

2000年代までは、チームやレーサーの技量差が大きく、レース中の故障やアクシデントが多数起こり、それがエンタメ性とうまくバランスが取れていた。

それが近年になり、チーム運営はさらにプロ化し、レーサーの技量も高い水準で横並びとなり、結果的にレース中のアクシデントが減った。

ガンガンにぶつかり、レース終盤に大どんでん返しが起こるのがNASCARの当たり前、と思っていたファンにとって、物足りなさを感じるようになった。

もう1つ、NASCARを含めたアメリカンモータースポーツがアメリカで人気減少になっている理由がある。

アメリカでも、クルマばなれ!?

もう1つ、NASCARを含めたアメリカンモータースポーツがアメリカで人気減少になっている理由が、クルマばなれだ。

クルマ社会のアメリカで、クルマばなれは起こっていない、と思うかもしれない。

もう1つ、NASCARを含めたアメリカンモータースポーツがアメリカで人気減少になっている理由が、クルマばなれ。
もう1つ、NASCARを含めたアメリカンモータースポーツがアメリカで人気減少になっている理由が、クルマばなれ。

確かに、移動手段としてのクルマに対する需要は健在だ。90年代まではC/Dセグメントセダンが市場の主流だったが、2000年代からSUVやピックアップトラックなどライトトラックへと移行した。

そうした中で、アフターマーケット市場もある程度の規模で存続している。

だが、いわゆる「クルマ好き」の高齢化は日本と同様だ。「クルマ好き」の多くが「モータースポーツ好き」であり、モータースポーツファン数の減少とファンの高齢化が顕著となってきた。

日本でのNASCAR放送が1つの区切りとなったいま、改めてアメリカンモータースポーツの将来あるべき姿について、深く考えさせられる。

テスラなどEV需要が今後さらに伸びことで、EVであるフォーミュラeがアメリカでも定着するのか。それとも、実車ではなくヴァーチャルなEスポーツがモータースポーツの主流になるのだろうか?

記事に関わった人々

  • 桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?

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