【速度世界記録更新に向けて】ブラッドハウンドLSRの挑戦 目指すは4桁マイル? 前編

公開 : 2020.03.20 20:50

ダウンフォースは不要

ボディに余計なものなどほとんどないが、2009年にリチャード・ノーブルによって創り出されて以来、ブラッドハウンドにはいくつかの大幅な変更が加えられている。

「ジェットエンジンとロケットの位置が入れ替えられ、フィンはより巨大化しています」

ブラッドハウンドで速度記録に挑戦するには、チームが毎日16時間の作業をこなす必要がある。
ブラッドハウンドで速度記録に挑戦するには、チームが毎日16時間の作業をこなす必要がある。

コンセプト段階では、より重量のあるジェットエンジンがロケットの下に置かれていたが、ロケットがパワーを発揮し始めると、ブラッドハウンドのノーズを押し下げる効果を発揮することが確認されたのだ。

フロントにはこれを防止するための調整可能なウイングが設置されていたものの、「このシステムを上手くフェイルセーフとして活かす方法を見つけ出すことが出来ませんでした」、チャップマンは話している。

「ロケットのほうが極端に幅が狭いので、ジェットエンジンとロケットを入れ替えることで、より搭載位置を下げることが出来、いまでは低重心をも実現しています」

巨大なアルミニウム製ホイールはエンジンによって駆動されるわけではないため、ブラッドハウンドではグリップを得るためのダウンフォースを必要としていない。

実際、ダウンフォースゼロと最小限の空気抵抗が求められているのだ。

「面白いことに、マッハ0.6程度まではダウンフォースが増大していきます」と、チャップマンは言う。

「その後、マッハ0.6以上に達すると、ダウンフォースが減り始め、マッハ1になると、ダウンフォースがゼロになります。音速を越えるとリアに揚力が発生するので、リアのウイングレットが必要なのです」

シミュレーションは完ぺき

「昨年秋のテストで驚かされたのは、エアロダイナミクスに関するシミュレータの正確性でした。ポイントとなるのは、コンピュータによるシミュレーションには3つの異なる方法があるということです」

「あるシミュレーションでは、ほぼ完ぺきな再現性を確保していました。最大20%の誤差を覚悟していましたが、結果的には最大でも誤差は5%以内に収まっていたのです」

ブラッドハウンドLSRの挑戦
ブラッドハウンドLSRの挑戦

「もし博士論文でこんな結果を示せば、データの捏造を疑われるでしょう。それほどこのシミュレータは驚くべき再現性を確保していたということです」

チャップマンはまるで近所を走り回るときの速度を口にするように、気軽に驚くべき数字を上げる。

「問題は560km/h以下の速度で起こりました」と、彼は言う。「マシンを安定的に走らせようとするのですが、パワーが出なかったり、センサーが正常に機能しないなどの問題に対処する必要がありました」

昨年7月、南アフリカでのジェットエンジンだけでのテストが決まると、「文字通り、ボディは白く塗られただけの状態でしたが、2007年にニューキー空港で行って以来のテストを行うため、マシンをパッキングして南アフリカへと向かいました。ニューキーでのテスト以降は棚上げの状態だったのです」と、チャップマンは話している。

「南アフリカでの最初の数週間はトラブル続きでした。エンジンをスタートしようにも、まずは故障したセンサーを探し出すような状態だったのです。560km/hから640km/hといった速度に到達するまでに、解決すべき問題が山積していました」

それでも、この段階をクリアすると、事態は驚くほど好転している。

「一旦走行可能な状態になると、ラスト3回のテストでは走るたびに80mph(129km/h)ずつ記録が伸びていきました」と、チャップマンは話す。「もちろん、簡単ではありませんでしたが、こうした結果は当然でした」

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