四輪駆動システムが与える安心感

ディアブロの進化版とも捉えられるが、先代の不備は一掃してある。フロント・サスペンションは車両前方へ移動。トランスミッションはシフトリンケージを改良し、ダブルコーンとトリプルコーン・シンクロを採用することで強度も高められている。

乗降性を改善するため、サイドシルの上面はディアブロより25mm低く、ドアは5度大きく開く。全幅は2045mm。攻撃的なプロポーションで、後方視界は想像通り良くない。長方形のサイドミラーが、少し助けてくれるが。

ランボルギーニ・ムルシエラゴ(2001〜2010年/英国仕様)
ランボルギーニムルシエラゴ(2001〜2010年/英国仕様)

見た目だけでなく、エンジンも攻撃力は壮大。だが、運転するのに圧倒されるほどではない。

乗り心地はしなやか。ステアリングホイールも軽くはないが、無意味には重すぎない。見通しの良い郊外の道なら、思いの外短時間でリズミカルに運転できるようになった。

クラッチペダルの重さは妥当で、つながりも漸進的。右ハンドル車のペダルレイアウトは左側へ寄っているが、ブレーキペダルを少し踏み込むと、アクセルペダルと高さが揃う。シフトダウン時のヒール&トウに丁度良い。

そんな細かな設計も、モンスターを高速域で操るのには重要な鍵となる。シフトレバーの操作も一興。メカニカルな精度を味わいながら、ノブを握り肘から腕を動かし、次のギアを選ぶ。V12エンジンと同等の、ドライビング体験の要素になっている。

ギア比は1速と2速がかなりロング。6.2Lエンジンの甚大なパワーを、実際に楽しめる。四輪駆動システムが、安心感を与えてくれる。手足を思い切り動かすことを、ムルシエラゴは快く受け入れてくれる。

扱いやすくドラマチックなV12

発売は2001年だが、最高出力580ps/7500rpm、最大トルク66.1kg-m/5400rpmを発揮するから、現在でもパフォーマンスは絶大。しかも日常的な速度域でも滑らかで粘り強い。バランスの良さを感じさせる。

出力は回転数とともに上昇。トルクは中回転域に山がある、なだらかなカーブを描く。その扱いやすさを実現しているのが、可変インテークパイプの採用だ。

ランボルギーニ・ムルシエラゴ(2001〜2010年/英国仕様)
ランボルギーニ・ムルシエラゴ(2001〜2010年/英国仕様)

トルク不足とは無縁で、4500rpmで勢いが高まり、ドラマチックさに拍車がかかる。7500rpmまで一気呵成に吹け上がり、レブリミット付近で若干息苦しそうな素振りを見せる。

シフトアップし、再びトルクの山に乗る。ランボルギーニ・ムルシエラゴは今回の3台で最も軽く、最もパワフル。実際にそれを体験できる。

ディアブロから大きな進化を得ているが、カーブの続く道の処理では、現代的なモデルにまでは及ばない。トラクションは巨大。反応が鈍いものの、トラクションコントロールが付いている。

ステアリングは切り始めで重く、アンダーステアが明確。ドライサンプの採用で、エンジンの搭載位置はディアブロより50mm低いが、前後の重量配分は42:58とリア寄り。

適切なタイミングでアクセルペダルを踏まないと、高い速度域ではクラッシュが待っている。高速コーナーをアクセルオフで抜けると、リアの重さがヒシヒシと伝わってくる。

エンジンは驚くほど扱いやすく、サウンドが興奮を誘う。英国郊外の制限速度、97km/h以上の速さへの欲求を抑えることが難しい。何日間、運転免許を取り消すことなく過ごせるだろうか。

この続きは中編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ベン・バリー

    Ben Barry

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ランボルギーニ・ムルシエラゴ、フェラーリ575 M、アストン マーティン・ヴァンキッシュ V12気筒乗り比べの前後関係

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