ランボルギーニのV12エンジンを振り返る 350GTからミウラ、アヴェンタドールへ 後編

公開 : 2023.04.30 08:26

V12エンジンのスーパーカーを生み出してきたランボルギーニ。ハイブリッド化が迫る今、英編集部が当時の技術者へ話を伺いました。

ランボルギーニで最も美しいエンジンだった

「ランボルギーニ350GTV プロトタイプのエンジンルームには、赤いセラミックタイルが入った箱が積まれていました。正しい車高へ調整されるようにね」。技術者だったオリビエロ・ペドラッツィ氏が笑う。

「ランボルギーニさんはドアをロックし、鍵をポケットに隠していました。ボンネットの中を見たいと声がかけられると、クルマを運転した人が鍵を持っていってしまった、と説明していましたよ」

ブルーのランボルギーニ・アヴェンタドール・ウルティメと、ゴールドのランボルギーニ・ディアブロ
ブルーのランボルギーニ・アヴェンタドール・ウルティメと、ゴールドのランボルギーニ・ディアブロ

「念の為エンジンが収まるように、エアインテークを切断する必要もありました。量産版では、サイドドラフト・キャブレターを組んで解決しています」

ランボルギーニ・ミウラでは、背の高いダウンドラフト・キャブレターへ戻されている。シリンダーヘッドの間へ垂直方向に設計された、吸気ポートへ効果的に混合気を流し込むため。

ランボルギーニの歴代のエンジンで最も美しいものだったと、同席していた1人がつぶやく。賛同と感謝の声が、インタビューする部屋を満たした。

V型12気筒エンジンの排気量は、当初3465ccだったが、ミウラやエスパーダ、初期のカウンタックでは3929ccに拡大。その後も多くの改良が加えられつつ、1982年に全面的な変更が施された。

技術者だったジャンカルロ・バルビエリ氏が振り返る。「あれは、初めての本格的な再設計でした。ブロックとヘッドの間にスペーサーを挟んでストロークを長くし、ブロック自体の変更なしに4754ccへ拡大させたんです。非常に堅牢でパワフルでした」

クアトロバルボーレからインジェクションへ

1985年のカウンタックQV(クアトロバルボーレ)とオフローダーのLM002では、排気量は5.2Lへ拡大。シリンダー1本当りに4本のバルブを備えた、新しいヘッドを得た。バルビエリは、事実上は新エンジンだったと説明する。

「ブロックとヘッド、ピストンも、すべて新設計でした。中央にエアフィルターを載せた、ランボルギーニでは初のV12エンジンになりました」。吸気ポートが垂直ではなくなり、一般的なVバンク内へ配置されていた。

ランボルギーニ・ディアブロ(1990〜2001年/欧州仕様)
ランボルギーニ・ディアブロ(1990〜2001年/欧州仕様)

これは、マセラティの技術者、ジュリオ・アルフィエーリ氏が設計したレーシングユニットに影響を受けている。実は、その新しいクアトロバルボーレ・ユニットは、アルフィエーリ本人が設計したのだという。スーパーカーには、様々な人が関与しているのだ。

「5.2Lエンジンでは、当初ウェーバー・キャブレターを採用していましたが、後に燃料インジェクションへ変更されています」。バルビエリが続ける。

「ランボルギーニ・ウラッコのV8エンジンで使った、ソレックスが好きではなかったんですよ」。技術者だったティツィアーノ・ベネデッティ氏が話を引き継ぐ。

「ウラッコのエンジンの試作段階で、インテークの上に大きな火柱ができたんです。混合気の渦が上に伸びて」

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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