最大の強みはe-パワー 日産エクストレイルへ英国試乗 優れた洗練性と実環境の燃費 後編

公開 : 2022.10.31 08:26

新型エクストレイルが欧州市場にも上陸。ハイブリッドのe-パワーなど、全体の訴求力は高いと英国編集部は評価します。

静かで高効率にSUVを引っ張るe-パワー

新世代モデルらしく、4代目日産エクストレイルのダッシュボードには12.3インチのタッチモニターが据えられた。同時に、エアコンの操作系などには実際に押せるハードスイッチが残されており好印象。デジタルとアナログが、塩梅良くバランスしている。

大きなタッチモニターのグラフィックは鮮明で見やすい。有線でアンドロイド・オートと、無線でアップル・カープレイにも対応している。試乗時に少し触ってみたが、メニュー構造などは理解しやすく、扱いやすいシステムだといえるだろう。

日産エクストレイル e-パワー e-4orce アセンタ・プレミアム(欧州仕様)
日産エクストレイル e-パワー e-4orce アセンタ・プレミアム(欧州仕様)

そんな優れた印象は、実際の走りにも展開される。シリーズ式ハイブリッドという、複雑なシステムを搭載することを感じさせず、静かで高効率にSUVのボディを引っ張る。ハイブリッドでは一般的な、CVTがエンジンの回転数を不要に高めることもない。

ドライブモードを変更すれば、明確な違いを体験できる。スポーツ・モードではe-パワーの反応が高まり、キビキビと運転できるように変化。エコ・モードではアクセルペダルの踏み込みに対する反応が緩やかになり、ドライバーの気持ちを鎮めてくれる。

シフトセレクターで「B」を選択すると、回生ブレーキの効きが増強。アクセルペダルの加減だけで発進から停止までをまかなえる、ワンペダル・ドライブに近い走りが可能になる。ハイブリッドモデルとして、特に市街地では強力な回生ブレーキは有効だ。

狙ったラインへ導きやすいシャシー

e-パワーの強みは洗練されたマナーだけでなく、現実的にエネルギー効率にも優れるところにもある。マイルド・ハイブリッドのエクストレイルより、燃費は15%から20%ほど良いそうだ。

カタログ値では、15.5km/L前後がうたわれている。今回の試乗では市街地や高速道路などを複合的に走行して、それに近い数字が得られた。

日産エクストレイル e-パワー e-4orce アセンタ・プレミアム(欧州仕様)
日産エクストレイル e-パワー e-4orce アセンタ・プレミアム(欧州仕様)

また2基の駆動用モーターで四輪駆動を叶えたエクストレイルの場合、微細なモーター制御により優れたトルク伝達も実現している。アクセルペダルの操作に対する反応は素早く、オフロードでもその能力は発揮されるはず。

ただし、エクストレイルは本格的なオフローダーではなく、SUVの延長上にはある。今回は、舗装路を外れるチャンスはなかった。

操縦性は、ボクシーな見た目のSUVから抱くイメージから大きくは離れていない。シャープなシャシーは与えられておらず、ドライバーがワインディングで気持ちを高ぶらせることはないだろう。

コーナーではボディロールが適度に抑え込まれ、ステアリングホイールを切り込んでいった際の反応も鮮明。一方で手の力を緩めると、バネで戻されるようなやや不自然な弾性も感じられた。とはいえ、狙ったラインへ導きやすく、ボディも大柄には感じられない。

唯一引っかかったのが低速域での乗り心地。試乗車が大きな20インチ・ホイールを履いていたことも、影響しているだろう。英国の傷んだ路面では悪化する可能性があり、その場合は全体的に洗練されたエクストレイルの足を引っ張ることになりそうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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