マニア心をくすぐるスプリント トライアンフ・ドロマイト 英国版クラシック・ガイド 前編

公開 : 2023.02.04 07:05

旧車として乗りやすい選択肢だと英編集部が推すドロマイト。日本への正規輸入はありませんでしたが、その魅力をご紹介します。

ミケロッティの代表作の1台

増えた開発コストを販売収益で回収しようと、常に努力を続けてきたトライアンフ。ブランドイメージが伴わなかったとしても、革新的な技術を搭載したモデルの創出は得意といえた。

今回ご紹介する1972年発売のドロマイトも、そんな1台。前輪駆動の1300からスタートし、一定の支持を集めた後に後輪駆動版も追加されている。

トライアンフ・ドロマイト・スプリント(1973〜1980年/英国仕様)
トライアンフ・ドロマイト・スプリント(1973〜1980年/英国仕様)

スタイリングを手掛けたのは、イタリアの巨匠、ジョヴァンニ・ミケロッティ氏。フェラーリのグランドツアラーから日野のサルーンまで、多くのモデルに関わってきた彼だが、代表作に含まれるのがドロマイトだろう。

均整の取れた上品な見た目に、上質なインテリアが組み合わされ、メディアの評価も高かった。荷室は少々狭かったけれど。

1972年のモーター誌を振り返ってみると、「価格帯を問わず、ライバル以上にドロマイトはドライバーにとって快適なクルマです。シートの調整域が大きく、操縦系のレイアウトは整い、他メーカーがお手本とすべきものでしょう」。と評価している。

ドロマイトで、イメージリーダーを務めたのが1973年のスプリント。シングルカムで16本のバルブを駆動するSOHC 4気筒エンジを搭載し、ラリーやレースで活躍している。

「この価格帯ではライバル不在といえる、価格価値に優れたモデルです。3200kmほど試乗し、仕上がりに納得しました。われわれも1台注文したという結果が、高い評価を物語ります」。とモーター誌は綴っている。

多能なクラシックとしてオーナーを満たす

スプリントの見た目の特徴といえたのが、標準装備のビニール張りルーフとアルミホイール。これは英国車初の設定だった。

よりベーシックな位置付けの、ドロマイト 1850でも装備は充実。当時としては珍しく、熱線入りのリアガラスも与えられていた。ただし、初期型ではスイッチがショートする可能性があるから、クラシックとして楽しむ場合は注意が必要だろう。

トライアンフ・ドロマイト・スプリント(1973〜1980年/英国仕様)
トライアンフ・ドロマイト・スプリント(1973〜1980年/英国仕様)

パワートレインに合わせて、トランスミッションのギア比も適切に設定されていた。スプリントは1850よりファイナルギアがショートで、レシオ幅が広く、3速からオーバードライブまで活かした効果的な走りを可能としていた。

排気量の小さい1500TCはややギア比が高く燃費重視といえたが、充分な能力は発揮した。乗りやすいファミリーサルーンだったといえる。

ドロマイトの生産は1980年に終えるが、中古車の価格は低迷。価値が軽んじられ、スプリント以外には殆ど注目が集まらなかった。その結果、残存台数は多くない。スプリント風に改造された例もあるので、購入時はじっくり状態を確かめたいところ。

洗練された万能サルーンとして、英国では支持を集めたトライアンフ・ドロマイト。今でも、多能なクラシックとしてオーナーを満たしてくれることだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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