今後の確実な礎になる BYDアット3へ試乗 航続距離420km 良い意味で印象は普通

公開 : 2023.03.21 08:25  更新 : 2023.05.01 07:57

ポップな車内 至って普通な走りの印象

インテリアは、外観から想像する以上にモダンでポップ。最上級のデザイン・グレードを選ぶと、ダッシュボード中央に回転できる15.6インチのタッチモニターが据えられる。

インフォテインメント・システムのインターフェイスは理解しやすい。サブメニューへ入ることなく、主要な機能に辿り着ける点は好印象。タッチモニターとは別に、実際に押せるハードボタンによるショートカットキーも付く。音声認識システムも実装する。

BYDアット3 デザイン(英国仕様)
BYDアット3 デザイン(英国仕様)

メーターパネルも小ぶりなモニター式となり、鮮明で見やすい。主要な操作系のレイアウトに、不自然さはない。

エアコンの送風口は、例えが古いが、ジュークボックスのレコードが並んだ部分のよう。ドアパネル側のスピーカーには、ギターの弦のようなワイヤーが張られている。ドライブに飽きた子どもが、弾いて遊ぶ姿が思い浮かぶ。

リアシート側の空間は広い。荷室はクラスとしては小さめで、容量は440Lだ。

発進させてみると、BEVのファミリー・クロスオーバーらしく印象は至って普通。加速は充分に力強いが、息を呑むほどではない。ステアリングも、運転へドライバーを引き込むことはないものの、正確といえる。

回生ブレーキは、ドライブモードに応じて強さが変化する。アクセルペダルだけで発進から停止までまかなえる、ワンペダルドライブには対応していない。ブレーキペダルの踏み心地は淡白だ。

乗り心地は、傷んだ英国の路面でも良好。舗装の凹凸や剥がれた穴などの衝撃を、上手に均してくれていた。

目立った訴求力は備わらなくても確実な礎

アット3の英国価格は、トップグレードのデザインでも3万8990ポンド(約627万円)から。過剰に安くは設定されていないものの、価格競争力は低くないといえる。

少なくない中国の新興メーカーが、大きな野心を抱いて欧州市場に参入し始めている。そのなかでもBYDは、最も競争の激しいセグメントに属するモデルで、真っ向勝負に挑むことになる。

BYDアット3 デザイン(英国仕様)
BYDアット3 デザイン(英国仕様)

確かにソツのない内容でまとまっている。目立った弱点はないようだ。かといって、既存メーカーのユーザーを引っ張ってこれるほどの訴求力を、アット3は備えていないように思う。

それでも、BEVのクロスオーバーとしての完成度に不足はない。控えめな主張が、BYDの将来に向けた確実な礎になるように感じた。

BYDアット3 デザイン(英国仕様)のスペック

英国価格:3万8990ポンド(約627万円)
全長:4455mm
全幅:1875mm
全高:1615mm
最高速度:160km/h
0-100km/h加速:7.3秒
航続距離:420km
電費:6.4km/kWh
CO2排出量:−g/km
車両重量:1680kg
パワートレイン:AC永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:64.5kWh
急速充電能力:88kW(DC)
最高出力:203ps
最大トルク:31.6kg-m
ギアボックス:−

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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