ザ・グランドツアラー ベントレー・コンチネンタルGT フェラーリ612 スカリエッティ アストン マーティンDB9 3台比較 後編

公開 : 2023.08.13 07:07

2000年代初頭に誕生した、ブランドを象徴するグランドツアラー。12気筒エンジンを積んだ3台を、英国編集部が振り返ります。

同時代の他のフェラーリより扱いやすい

アストン マーティンDB9のホイールベースは、今回の3台で最も短い。確実に路面へ追従する安定感と相まって、操縦性のシャープさに目を見張る。見通しのきくカーブへ積極的に侵入すれば、爽快に回頭し、ラインをトレースしていく心地良さを堪能できる。

突っ込みすぎると、穏やかなアンダーステアへ転じる。だが、リアアクスルの駆動力で姿勢を整えやすいことにも唸らされる。

アストン マーティンDB9(2004〜2012年/英国仕様)
アストン マーティンDB9(2004〜2012年/英国仕様)

ステアリングの感触は、フェラーリ612 スカリエッティを超えてはいない。オートマティックの変速も、若干時間を要する。それでも、穏やかな気持を保っている限り、郊外の一般道を高速で快適に処理できる。

ダークブルーの612 スカリエッティのオーナーは、ニール・ルース氏。6速シーケンシャル・セミオートマティックが、迅速な変速を披露する。グランドツアラーとして、同時代の他のフェラーリより扱いやすいことは明らかだろう。

どこを切り取っても、視覚的なドラマには事欠かない。V12エンジンの頂部を飾るレッドのカムカバーや、彫刻的なダッシュボードのデザイン、センターコンソールの小さなリバース・レバーに至るまで、眺めていて飽きることはない。

新車時は、この3台で最も高価だった。そのかわり、最も情感的でもある。

シートへ腰を下ろすと、ドライバーへ焦点が向けられていることを実感する。サイドボルスターは高く、座面は低く、操作系との距離感が好ましい。

動力性能を引き出したくなる壮観な音響

612 スカリエッティのリアシートは比較的広く、平均的な身長の大人なら、大きな不満なく長距離移動できるはず。荷室はDB9より70L大きいから、手荷物の置き場に困る可能性も少ない。

エレガントと表現したいスタイリングであっても、612 スカリエッティのV12エンジンは壮観なサウンドを奏でる。高回転域での素晴らしい表現力は、動力性能をすべて引き出して欲しいと、ドライバーへ強く訴えているように聞こえる。

フェラーリ612 スカリエッティ(2004〜2011年/英国仕様)
フェラーリ612 スカリエッティ(2004〜2011年/英国仕様)

もしフルパワーを引き出すなら、6速セミオートマティックが生む衝撃を和らげるため、変速時はアクセルペダルを僅かに戻す作業が求められる。スポーツ・モードを選び、容赦ないシフトアップと圧倒的な加速力を味わうのも悪くないが。

グリップ力は見事といえ、気張りすぎると控えめなアンダーステアで限界を教えてくれる。長いホイールベースのおかげで、安定性は高い。

ステアリングホイールの感触は随一。ボディサイズが大きいから、姿勢制御はフェラーリの理想には届いていないようだ。路面が荒れてくると、落ち着きにも陰りが出てくる。

一方、ベントレー・コンチネンタルGTは、これらの2台とは明確に方向性が違う。内装にはレザーとウッドパネルが惜しみなく用いられ、会員制バーのラウンジのよう。四輪駆動システムは秀抜な安定性を披露し、外界の変化に翻弄されることはない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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