4ドア+4シーターの本物 フェラーリ・プロサングエへ試乗 例えるならGTC4クロスカントリー 前編

公開 : 2023.03.11 08:25

マラネロが生み出した4ドア+4シーターのクロスオーバーが、遂に公道へ。英国編集部が、冬のアルプスで実態に迫りました。

真のフェラーリになる可能性を確信した

筆者は今、雪深いイタリアにいる。期待のフェラーリ・プロサングエへ試乗するために。けれどマラネロの技術者は、気温が低いため待って欲しいと話す。AUTOCARが独自に英国で準備した機会なら、恐らくピットレーンで暖気しているところだろう。

タイヤの性能を発揮するには、寒すぎるらしい。カフェラテを飲んで、太陽のエネルギーが多く届くまで待つしかない。温かい4月なら理想的だが、少なくとも悪条件での走行性能は確かめられる。

フェラーリ・プロサングエ(欧州仕様)
フェラーリ・プロサングエ(欧州仕様)

せっかくだから、同社のエンジニアへいくつか質問させていただいた。彼によれば、背の高いモデルを作ろうという決断へ至ったわけは、真のフェラーリになる可能性を確信したからだという。

かくして、大きなフェラーリが誕生した。SUVと呼ぶべきか、クロスオーバーと呼ぶべきか、少し悩む。マラネロの技術者は、あえてそのような呼称を用いようとしない。

続けて、逆に質問を受ける。アストン マーティンDBXランボルギーニウルスロールス・ロイスカリナンを運転した経験があるかどうか。とても丁寧な口調で。

筆者は、いずれのモデルも独自性が高く、直接的なライバルは存在しないと考えている。フィッシュ&チップスが、カレーライスと直接競うことがないように。どちらを選ぶかには、明確な理由がある。金曜日の夜に料理するのが面倒だから、とか。

自然吸気6.5L V12+トランスアクスル

話がずれてしまったが、プロサングエは、フェラーリ初となる正式な4ドアモデル。ウルスやポルシェカイエンは、フォルクスワーゲン・グループ内でアーキテクチャを共有するが、こちらは独自のアルミニウム製モノコックを採用する。

英国価格は、31万3120ポンド(約5041万円)から。ディーラーは、6万ポンド(約966万円)程度のオプションは追加して欲しいと考えているらしい。

フェラーリ・プロサングエ(欧州仕様)
フェラーリ・プロサングエ(欧州仕様)

滑らかなボンネットの内側、フロントアクスルの後方には、自然吸気の6.5L V型12気筒が収まっている。最高出力725ps、最大トルク72.8kg-mを発揮し、燃費は5.8km/Lがうたわれる。

駆動系統は、フェラーリFFとその後継のGTC4ルッソから派生したもの。ボディ後方に、トランスアクスル・レイアウトで8速ツインクラッチATが組まれる。さらに別の2速ATが、フロントアクスルへ駆動力を伝える。パートタイムの四輪駆動となる。

ロング&ローなシューティングブレークのGTC4ルッソは小さくない支持を集めたが、フロントノーズが長く、ドアは2枚しかなく、実用性が高いとはいえなかった。顧客は、もっと乗りやすいモデルを欲していた。

プロサングエには、ボディ側面にドアが4枚と、大きなリアハッチがある。ISOFIX規格のチャイルドシート固定ポイントも備わる。最低地上高は185mmあるから、歩道の段差も心配いらない。

全長は4972mmで、全幅が2028mm、全高は1586mmある。ちなみに、ウルス・ペルフォルマンテより約30mm、DBX707より約90mmも背が低い。車重は2033kgだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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