ザ・グランドツアラー ベントレー・コンチネンタルGT フェラーリ612 スカリエッティ アストン マーティンDB9 3台比較 中編

公開 : 2023.08.13 07:06

2000年代初頭に誕生した、ブランドを象徴するグランドツアラー。12気筒エンジンを積んだ3台を、英国編集部が振り返ります。

FRながら46:54の驚異的な前後重量配分

フェラーリ612 スカリエッティのフロントへ積まれた、V型12気筒エンジンの排気量は、456GTのティーポF116ユニットから275cc増しの5748cc。性能アップが図られ、ティーポF133へ改名され、547ps/7200rpmと59.8kg-m/5250rpmを発揮した。

エンジンの位置はフロントアクスルより後方で、ホイールベースは456GTより350mmも長い。車内空間が広げられただけでなく、高速走行時の安定性やトラクションでも有利に働いた。

手前からフェラーリ612 スカリエッティと、ベントレー・コンチネンタルGT
手前からフェラーリ612 スカリエッティと、ベントレー・コンチネンタルGT

シャシーはアルミニウム製のスペースフレーム。ボディサイズは拡大していたが、車重は456GTより軽量な1840kgに抑えられていた。

初代コンチネンタルGTより500kg以上も軽く、0-97km/h加速は4.4秒。最高速度は321km/hが主張された。大きなグランドツアラーだとしても、フェラーリとして動力性能が期待を裏切ることはなかった。

トランスミッションは、従来的な6速マニュアルの他に、F1 Aと呼ばれる電動油圧式の6速シーケンシャル・セミオートマティックも選択できた。リアアクスル側に配置されるトランスアクスル構造で、FRながら46:54という驚異的な前後重量配分を叶えた。

21世紀のフェラーリとして、電子技術も充実していた。CSTと呼ばれるスタビリティ・コントロールと、同社初となるアクティブ・ダンピング機能を実装。メモリー機能付きパワーシートにデュアルゾーン・エアコン、ナビなど、快適装備にも不足はなかった。

アグレッシブさを大幅に強めたスタイリング

アストン マーティンDB9を発表したのは、2003年9月。その頃の最高経営責任者、ウルリッヒ・ベズ氏は、「疑いようなく、弊社にとって過去最も重要なモデルです」。と、その価値を自ら主張した。

1994年に発売されたDB7の後継モデルに相当し、グレートブリテン島中部のゲイドンに新設された拠点で設計された、最初のアストン マーティンだった。同社は、1994年にフォードのプレミア・オートモーティブ・グループ傘下へ組み入れられていた。

アストン マーティンDB9(2004〜2012年/英国仕様)
アストン マーティンDB9(2004〜2012年/英国仕様)

開発では生産効率が強く意識され、製造技術も飛躍的に進歩していた。DB7を1台生産するのに350〜400時間が必要だったのに対し、DB9では200時間に短縮されていた。

抑揚のあるスタイリングは、先代からアグレッシブさを大幅に強めていた。チーフデザイナーを務めたヘンリック・フィスカー氏は、「1つのアルミニウム・ブロックから削り出されたような見た目を求めました」。と述べている。

ルーフは滑らかに処理され、ドアは12度斜め上方向に開く「スワンウィング」で乗降性を確保。ドアハンドルは、表面に一体化されていた。DB7よりホイールベースは149mm長く、フロントトレッドは52mmワイド。シリアスな容姿に仕上がっていた。

基礎骨格は、アストン マーティンが新たに手掛けたVH (垂直・水平)プラットフォーム。押出成型されたアルミニウム材で構成され、ボディ剛性はDB7比で2倍に高められつつ、車重は25%も軽かった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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