ザ・グランドツアラー ベントレー・コンチネンタルGT フェラーリ612 スカリエッティ アストン マーティンDB9 3台比較 前編

公開 : 2023.08.13 07:05

2000年代初頭に誕生した、ブランドを象徴するグランドツアラー。12気筒エンジンを積んだ3台を、英国編集部が振り返ります。

救世主となった初代コンチネンタルGT

1990年代初頭、ベントレーは次の世紀を迎える準備にあえいでいた。グレートブリテン島の中西部、クルーに構えた工場ではアルナージアズール、コンチネンタルRといったモデルが、年間1000台にも満たないペースで生産されていた。

得られる収益は、工場の維持で精一杯。それぞれのモデルが特化しており、工数が必要で、職人による手作業も多かった。1台の製造コストは、車両価格に迫る20万ポンドに達したとか。しかも、購入したいと考えたのは富裕層のごく一部に限られた。

ベントレー・コンチネンタルGT(2003〜2011年/英国仕様)
ベントレー・コンチネンタルGT(2003〜2011年/英国仕様)

しかし、1998年にフォルクスワーゲン・グループが助けの手を差し伸ばす。BMWとの協議の結果、同じヴィッカース社傘下にあったロールス・ロイスはグッドウッド郊外の新工場へ拠点が移され、別の道を歩み始めた。

そしてベントレーは、新たな計画を実行へ移した。まったく新しい、グランドツアラー・クーペの開発が始まった。

ローコストに生産でき、従来より広範囲の人へ訴求できつつ、英国伝統ブランドのイメージを維持することが目指された。かくして救世主となる、初代コンチネンタルGTが導かれた。

今回ご登場願ったネイビーに塗られたコンチネンタルGTは、少なからず残存する例のなかでも特別。新車時から広報車両としてメディアによる試乗へ登用され、当時の紙面を飾ってきた。ラグジュアリーなマリナー仕様が、その過去を物語っている。

フェートンとプラットフォームを共有

新時代を迎えたベントレーと同時期に誕生した、12気筒エンジンのグランドツアラー・クーペが2台ある。どちらもコンチネンタルGTが発売された翌年、2004年にやや異なる市場へ向けてリリースされ、それぞれ特長が高く評価されている。

その1台、フェラーリ612 スカリエッティの新車価格は、約17万ポンド。コンチネンタルGTより約6万ポンドも高価ではあったが、最高出力は同等で、実用性や動的能力という点で大きな違いはなかった。

ベントレー・コンチネンタルGT(2003〜2011年/英国仕様)
ベントレー・コンチネンタルGT(2003〜2011年/英国仕様)

他方、20年前に11万ポンドの予算を手にしていた英国人なら、10万3000ポンドで購入できた、新しいアストン マーティンDB9と天秤にかけたことだろう。同社はスポーツカーという位置づけで発売したものの、内容では肉薄していた。

初代ヴァンキッシュのために17万ポンドを準備できなくても、アストン マーティン・オーナーになることを可能としていた。イアン・カラム氏による、グラマラスなボディが手に入った。

そんな2台より先に登場したコンチネンタルGTは、基礎骨格となるプラットフォームとW型12気筒エンジンを、フォルクスワーゲンの最上級サルーン、フェートンと共有。ダーク・ヴァン・ブレッケル氏による高貴なボディが、その事実を巧みに包み隠した。

インテリアも見事な仕上がりにあった。往年のベントレーと遜色ない豪奢さといえた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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