2台分のガレージが欲しくなる フィアット・ヌォーヴァ500 EV ロンドンの中心で体験(2)

公開 : 2023.11.25 17:46  更新 : 2024.12.11 07:41

共感を得つつある電動化「エレクトロモッド」 クラシックカーの魅力を維持する解決策なのか 英国編集部がロンドンの中心で体験

電動化とのネガティブではない競争関係

バッテリーEVのメリットに、クラシックカー・ディーラーを営むピーター氏は疑問を投げかける。電気自動車へ積極的に乗り換えるより、現在のクルマを大切に走らせた方が、ライフサイクル全体でのCO2排出量は減るだろうと、彼は考えている。

多くのクラシックカーを電動化するのにも、駆動用バッテリーを作る必要がある。しかし、貴重なクルマは年間の走行距離が短い。ガソリンを燃やす量も限定的で、変換作業で発生するCO2を電動走行で回収するには、相当な時間が必要になるだろう。

クラシック・クローム・フィアット・ヌォーヴァ500 EV(英国仕様)
クラシック・クローム・フィアット・ヌォーヴァ500 EV(英国仕様)

一方、ロンドン中心部などのウルトラ・ローエミッションゾーンでは、古いクルマに対する規制免除も行われている。「数年後には、電動化されたクラシックとエンジンを維持したクラシックとの間で、ネガティブではない競争関係が生まれるかもしれません」

少なくとも今のところ、エレクトロモッドの需要はさほど大きくなく、不要になったバッテリーが再利用されている。空気のクリーンさも重視される都市部では、有効性は間違いない。

ピーターとお別れし、東のウェストミンスターへ。政府機関が立ち並ぶ静かな通りを、フィアット・ヌォーヴァ500 EVが進む。車内は狭く、クラッチペダルを踏まずに左足を浮かしているのは、案外疲れる。

ウェストミンスター橋へ続く通りは、いつもどおり渋滞中。ブレーキペダルを緩めて、数m進んでを繰り返す。通りすがりの観光客が、小さなイタリア車とビッグベンとのツーショットを撮影していく。

エレクトロモッドはクラシックカーと相性が良い

巨大な二階建てバスの隣では、気持ちが引き締まる。だが、混雑した交差点では小さなボディの扱いやすさが光る。目指すゴールは、英国で初めてクラシックカーの電動化を手掛けた、ロンドン・エレクトリック・カーズ社。ウォータールー駅の目の前にある。

創業者のマシュー・クイッター氏はエレクトロモッドのプロだが、課題の存在も理解している。「弊社をスタートさせた時の目標は、手頃な価格でEVへのコンバージョンを実行することでした」

クラシック・クローム・フィアット・ヌォーヴァ500 EV(英国仕様)
クラシック・クローム・フィアット・ヌォーヴァ500 EV(英国仕様)

「でも、それは大きな間違いでした。下を見て競争しても、メリットはありません。2万ポンド以下を考えていましたが、チャンスはなかったようです」

エレクトロモッドには、技術と時間が必要になる。初めてのモデルでは、設計・開発が特に重要だと認める。「モーリス・マイナー・トラベラーへ、日産リーフのパワートレインを積んだことがありました」。と、初期の失敗例を振り返る。

「最高出力は2倍、トルクは4倍以上に増えましたが、車重は350kgも増えたんです。シャシーとサスペンション、ブレーキも、すべて問題だらけ。ヘッドライトを交換するのに、バッテリーパックを外す必要もありました。すべて作り直しましたよ」

自身もクラシックカー・ファンであるマシューは、エレクトロモッドは割かれる予算や情熱の面で、クラシックカーと相性が良いとも考えている。「見た目は好きでも、信頼性や排気ガスを懸念する、新しいユーザー層が増え始めています」

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

フィアット・ヌォーヴァ500 EV ロンドンの中心で体験の前後関係

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