オープンドライブの喜び フィアット・バルケッタ 英国版中古車ガイド ベースはプント

公開 : 2023.09.07 08:25

スタイリッシュなオープン2シーター、バルケッタ。プントがベースのFFロードスターを、英国編集部が振り返ります。

イタリア車らしい魅力と希少性

コンパクト・オープン2シーターの分野で、揺るがない功績を築き上げたマツダMX-5(ロードスター)。現在までに4世代の進化を重ね、他を凌駕するドライビング・プレジャーを提供し続けている。

ただし、唯一といえる弱点がある。それは、珍しくないということ。既にマツダは、100万台以上のロードスターを世界中に送り届けている。素晴らしいことなのだが。

フィアット・バルケッタ(1995〜2007年/欧州仕様)
フィアットバルケッタ(1995〜2007年/欧州仕様)

周囲のドライバーと違うクルマが良い、と強く願うなら、フィアット・バルケッタはいかがだろう。ロードスターより間違いなく珍しく、イタリア車らしい魅力もある。

喜ばしくない事実だが、機械としての寿命が短く、多くが姿を消してしまった。サーキットやワインディングの駐車場で、自分と同じクルマが何台もいる、という状況にはなりにくいはず。コダワリ派からは避けられがちな、前輪駆動ではあるけれど。

右ハンドル車は提供されなかったが、左ハンドル車なら路肩を走る自転車やランナーを発見しやすい。ナンバー読み取り式の駐車場やETCなどが普及し、チケットの受け取りに手を焼く機会も減っている。スタイリッシュでありながら、お値段もお手頃だ。

新車時代をご存知の読者なら、ベース車両が当時のフィアット・プントであることをご存知かもしれない。コンパクト・ハッチバックがベースと聞いて、落胆しないで欲しい。ウーノ程ではなくても、プントもかなり走りに優れていた。

他では得難いオープンドライブの喜び

バルケッタが登場したのは、初代ロードスターの発表から5年後の1995年。フィアット・ディーラーから英国でも販売されたが、並行輸入で安い欧州仕様が上陸し、そちらの方が人気は高かった。

ボディサイドでは、つままれたようなキャラクターラインがカーブを描く。ドアハンドルには、高級感のあるアルミが用いられている。

フィアット・バルケッタ(1995〜2007年/欧州仕様)
フィアット・バルケッタ(1995〜2007年/欧州仕様)

2003年にマイナーチェンジされ、フロントノーズを中心にリフレッシュ。フォグライトやレザー巻きのステアリングホイールなどを獲得している。英国価格も大幅に引き下げられた。ただし容姿の美しさが影響し、前期型の方が中古車での人気は高い。

エンジンは、自然吸気の1.8L 4気筒ガソリン。可変カムシャフト・タイミング・システムを採用し、最高出力は130psを発揮した。車重は1060kgと軽量で、0-100km/h加速は8.6秒とまずまずの勢いを披露する。

パワーステアリングとパワーウインドウが標準装備され、トランスミッションは5速マニュアル。ソフトトップの開閉は手動で、稀に雨が侵入することがある。

英国仕様のオプションとして用意されたのが、コンフォート・パッケージ。内装がレザーで仕立てられ、パワーミラーや助手席側のエアバックなどが追加された。

バルケッタは、陽気で爽快。ロードスターやトヨタMR-2のように流暢な操縦性を獲得していないとしても、ソフトトップを開け放ち、太陽の光を浴びながらカーブの連続する道を運転すれば、他のモデルでは得難い喜びへ安価に浸れるはずだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ピアソン

    Mark Pearson

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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