クルマ漬けの毎日から

2016.06.30

さらばハイドロ、新システムとの出会い

I’m content to let the hydropneumatic system die with dignity

 

 

 
プジョー・シトロエンの取材でフランスへ行った。2カ所の取材先を移動しなければならなかったが、プジョー・シトロエンは私のために1961年製のシトロエンDS21のタクシーと、ミッシェルという名の運転手を手配してくれた。

このDSは遅いし、ブレーキも怪しいが、シートと乗り心地は大型のシトロエンが快適性で圧倒的な強さを誇っていた時代を思い出させた。現代のプジョー・シトロエンはあの時代を再来させようとしている。

 

 
嬉しいことに、ルノー クリオRSを再評価する機会に恵まれた。今回試乗したのは、改良された “220トロフィー” だ。このクルマのエンジンが自然吸気の2.0ℓから1.6ℓのターボに、また6速MTからパドルシフト付きのデュアルクラッチATに変更された時、いくつかの課題がマーケットから指摘されたが、今回はそれらを修正したモデルに試乗した。

この新型を私はとても気に入った。とはいえ、課題はまだ残っている。理想のサイズより大きい。つまり重いのだ。必要なのは3ドアであって、5ドアではない。また、高速道路での乗り心地はスムーズではなく、あまり快適ではない。それに、改良されたトランスミッションはエンジンをよくコントロールしているが、サーキットではまだマニュアル車ほど自然ではない。それでも、私の運転スタイルでは、220トロフィーの自然なつながり方をするギヤボックスと滑らかなエンジンのパワーは素晴らしいと感じる。ステアリングとシャシーのバランスが刺激的なので、ドライバーはお気に入りのBロード(田舎道)を走る時はコーナリングが楽しくて仕方ないだろう。

 

 
ブガッティ・オーナーズクラブのサーキット、プレスコット・ヒルクライムで楽しい時間を過ごした。プレスコットはチェルテナム(イングランド南西部)から北へ数mile行ったところにある。今日はここで、同僚のアンドリュー・フランケルと2台のロータス・エリーゼを走らせた。一台は新型のカップ250、そしてもう一台は私が所有している16年前に生産された初代Kシリーズである。

むろん新型のほうがずっと速いし、パフォーマンスもよい。それに品質も向上していると強く感じた。今、ロータスの品質はラインナップ全体で向上しているようだ。だが、2000年に登録され、70,000mile(約112,700km)走行した私のエリーゼの運転席から、運転が上手く、クルマの評価には怖いもの知らずのフランケルが満面の笑顔で降りてきた時、おとなげないが私はとても嬉しかった。

 

 
マクラーレン570GTに試乗するため、飛行機でスペイン領カナリア諸島のテネリフェ島へ向かった。570GTはあの素晴らしい570Sを少し穏やかにしたモデルだ。カナリア諸島へ行ったのは今回が初めてだったが、これほど走りがいのある難しい道路が多い土地とは予想していなかった。マクラーレンの人たちが選んだのは、570GTの総合的なテストに向いた素晴らしいルートで、ハイスピードドライブにはうってつけの道だったし、乗り心地の快適性をテストするのにも妥当な適度に荒れた路面だった。私は570GTのラグジュアリーなところが好きだし、横方向に開閉するハッチ、それに控えめなスタイリングもとても気に入った。もし570Sに試乗したことがなかったら、570GTが最高だと評価しただろう。だが、今でも570Sがマクラーレンのスポーツシリーズのなかで私のベストカーで、おそらくマクラーレン全体でもベストカーはやはり570Sだろう。そう考えながら、テネリフェ島を後にした。もしマクラーレンを手に入れるとしたら、たとえ究極モデルの P1がもっと安く手に入るとしても、570Sを選ぶのではないかと思う。570Sはそれほどいいクルマだ。

 

 
ルノー・クリオRS16(コンセプト)が公開され、とてもホッとしている(詳細は発表時のニュースをご覧ください)。このホットな情報を数ヶ月間も伏せておくのは、なかなか大変だった。2月にルノーのF1チームがパリ近郊で発表されたが、RS16のことを最初に知ったのは、この時ルノー・スポールのトップ、パトリス・ラッティと極秘に話していた時だった。

公式の発表によれば、RS16はクリオV6の伝統を引き継いでいるという。確かにそうだが、同時に名声を守るモデルでもある。ルノー・スポールは最新のクリオRSが少しマイルドな1.6ℓのターボエンジンを搭載し、5ドアの大きすぎるボディとパドルシフト付きで登場した時、いくぶんホットさを失った。このマニュアルのRS16が生産される場合、その台数は1日にわずか2台に限られるようだ。もしRS16が市場に投入されれば、ルノー・スポールの名は再び輝くだろう。

 

 
週明けの取材の準備として、この週末はシトロエンでまだハイドローリック(油圧)サスペンションを採用している唯一のモデル、C5に乗って過ごした。ハイドロニューマティック・サスペンションのCXは、オーストラリア出身の私が、40年前の夏に初めてヨーロッパで運転したクルマだった。15フィート(4.5m)もあるホイールベースのモデルを走らせた時、あの独特な乗り心地に驚嘆したことを今もよく覚えている。だが、他のクルマもこの乗り味に追いついてきたし、またでこぼこが多い道ではハイドローリックシステムは苦戦した。そして今回C5にあらためて試乗してみて、この点はいっそう明白になった。こんなことを書く時が来ようとは考えたこともなかったが、60年前に誕生したこのサスペンションシステムが素晴らしい功績を残した事実と共に終焉を迎えることを受け入れたいと思う。

 

 
早朝のフライトでパリへ行った。今回の任務は、シトロエン伝統のハイドローリックサスペンション(先にお伝えしたC5に採用されている)に代わる新しいシステムを採用したC4カクタスのプロトタイプに試乗することだった。シトロエン伝統のゆったりとした快適なサスペンションを思い出している読者もいらっしゃると思うが、今回のシステムでは、でこぼこが多い路面でも応答性が優れていることをまずお伝えしたい。また新システムは、C1から始まるシトロエンの全モデルに低コストで適用させることができる。ハードウェアに調和させるために、シトロエンは新しい哲学をまとめ、シート、防音、操作系のレイアウトなど、その他たくさんの項目にシトロエン・アドバンスト・コンフォートと呼ばれる一連の改良を施している。これらは、シトロエンの本質的な価値観に完璧に適合しているように思う。

translation:Kaoru Kojima(小島 薫)



 
 

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