クルマ漬けの毎日から

2024.05.08

1960年代のF3マシンのサウンドを久しぶりに間近で体感。フォードのモータースポーツ黄金期をもたらしたF2、F1エンジンにも想いを馳せました。

1960年代F3マシンのサウンドからDFVエンジンを想う 【クロプリー編集長コラム】

もくじ

フォードのモータースポーツ黄金期 初めの一歩
フォード・コスワース 2つの偉大なエンジン

translation:Kaoru Kojima(小島 薫)

フォードのモータースポーツ黄金期 初めの一歩

今年もグッドウッド・メンバーズ・ミーティングに参加した。グッドウッドに行くといつも、ノスタルジアを駆り立てられる。1960年代のレース部門の出走が始まった時のことだ。1.0リッターのフォードエンジンを搭載したフォーミュラ3のマシンが轟音とともに疾走したのを見て、私は懐かしさでいっぱいになった。

フォード・アングリア105Eは1959年に誕生した小型車。「ケント」と呼ばれる新型4気筒エンジンを搭載して登場。一方、同じ年にデビューしたBMCのミニに搭載されていたのが、その8年前に開発されたAシリーズエンジン。当時両エンジンはモータースポーツでも使われていた。

1950年代末にフォード・アングリア105Eに搭載されたショートストロークの997ccのケントエンジンが、当時主流だったBMC Aシリーズエンジンに勝ち始めた。なぜなら、ケントエンジンはピストン部分が大型であるため、モータースポーツバージョンにより大きなバルブを持たせ、吸気効率を高め、よりパワーを得ることができたからだ。

この新型エンジンの登場は、今日でも知られているフォードのモータースポーツ黄金期を、その後数年のうちにもたらす第一歩となった。このケントエンジンが好成績を挙げたことで、コスワースやホルベイ(Holbay)といった会社が、当時のロータス・セブンのようなマシンにより高性能なエンジンを搭載する活動を始めたのだ。

フォード・コスワース 2つの偉大なエンジン

DFVエンジンの開発チーム。左からビル・ブラウン、キース・ダックワース、マイク・コスティン、ベン・ルード。コスティンとダックワースはコスワースの創業者。

次にフォードはより大型かつ堅牢な構造を持つエンジンを開発し、それは有名な1588ccのロータスツインカムエンジンのベースとなった。また、F2エンジンのフォード・コスワースFVA(16バルブ)誕生のきっかけともなった。

さらにそのテクノロジーを活かして、1967年には3.0リッターのF1エンジンのフォード・コスワースDFVを誕生させたのだ。

DFVエンジンはグランプリで通算155勝という快挙を成し遂げた。大衆車のフォード・アングリアに新型ケントエンジンを初めて搭載した時から10年も経たないうちに、フォードはモータースポーツで偉大な成功を収めたのだ。当時私は、自動車雑誌でこういう話を夢中になって読んでいた少年だった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。

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